「あなた方が話すことは、お金のことや永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり」 国連の温暖化対策サミットで各国の代表を強い口調で非難し、早急な温暖化対策を求めたスウェーデンの16歳のグレタ・トゥーンベリさん。活動を始めてわずか1年余りで、国連の温暖化サミットに招待されました。8歳の時に地球温暖化のことを知ったというグレタさんを知っていますか?
2018年8月 1人で始めた座り込み
高校生のグレタ・トゥーンベリさんは去年の8月、毎週金曜日に学校を休んで、スウェーデンの国会議事堂の前で座り込み、地球温暖化への対策を訴える活動を1人で始めました。
この活動はSNSで世界中の若者の共感呼び、#Fridays For Future=未来のための金曜日と呼ばれました。
グレタさんは8歳の時に地球温暖化のことを知りました。世界の国々が温暖化の進行に対処できていないと危機感を持ったといいます。そして「温暖化は学校をさぼるよりも悪いことだ」と考え活動を始めました。
たった1人で始めた活動は瞬く間に広がり、国境を越えて多くの会議や集会に招待されるようになります。
2018年12月 「子どもの未来奪っている」
去年12月にはポーランドで開かれた地球温暖化対策の会議「COP24」に招待されました。その中で「大人はわが子を誰よりも愛していると言いながら、子どもの未来を奪っている」と演説。このスピーチでグレタさんの活動は世界に広く知られようになります。
ノルウェーの国会議員はグレタさんをノーベル平和賞の候補に推薦したことを明らかにしました。
2019年2月「大切な勉強の時間を無駄に?」
学校を休んで活動を行うことに批判もありましたが、ことし2月21日にはEU=ヨーロッパ連合の会議で演説。
「『大切な勉強の時間を無駄にしている』と言われるかもしれないが、政治家たちはこの数十年間を何もせず無駄にしてきた。私たちは温暖化の問題解決まで活動やめない」と決意を語りました。
2019年3月 世界120か国 若者が行動
3月15日。グレタさんの呼びかけに共感した若者が日本をはじめ欧米やアジアなど120以上の国や地域で地球温暖化対策呼びかけるデモを行いました。
パリでは約2万9000人が集まり、16歳の男子高校生は「地球を守るために僕たち若い世代が自分たちの未来のために動かないといけない」と訴えました。グレタさん自身もスウェーデンの首都 ストックホルムでデモに参加し、「自分たちの未来のためにこれからも活動を続けていこう」と呼びかけました。
2019年5月 温暖化サミットに招待される
5月28日、国連のデ・アルバ事務総長特別代表は記者会見で、ことし9月の国連総会で開催するハイレベル会合にグレタさんを招待していることを明らかにしました。
2019年7月 「『未来のための金曜日』に贈られた賞」
7月21日にはフランス北西部のノルマンディー地方に招かれ、平和に貢献した個人や組織を表彰する「自由賞」を受賞。
式典でグレタさんは「この賞は自分だけでなく『未来のための金曜日』に贈られた賞です。みんなで取り組んでいきましょう。私たちの運動は始まったばかりで求められている変化はまだ起こせていない。運動を続けなければならない」と呼びかけました。
2019年7月「ヨットでNYに行きます!」
グレタさんは温室効果ガスを排出するとして飛行機を利用しないようにしています。EU議会で演説した時もローマ法王に拝謁した時も移動は鉄道で、「環境のために私は飛行機に乗りません。時間はかかりますけどそれだけの価値はあります」と話しています。
国連の温暖化サミットに招待され、移動手段を検討していたグレタさん。7月29日、みずからのツイッターに「良いニュースです。ニューヨークでの国連の温暖化サミットに参加します」と書き込み、モナコのレースチームのヨットに乗せてもらい大西洋を横断すると発表しました。
2019年8月 夏休み「まだやることはたくさんある」
8月5日、スイス西部のローザンヌにグレタさんの活動に賛同する高校生や大学生など450人余りが夏休みを利用した集まりました。グレタさんも参加しました。
「去年、多くのことが起きたが世界全体の温室効果ガスの削減にはつながっていない。まだやることはたくさんある。(9月の温暖化対策サミットに招待されていることについて)世界の指導者が私たちの声を聞き、科学の声を聞いたと証明する機会になる」
2019年8月 NYに到着 200人が出迎える
8月14日、ニューヨークへ向けイギリス南部の港をヨットで出発したグレタさん。「船酔いとか多くの挑戦がありますがやり遂げます」
太陽光パネルで必要な電力を賄いながら約2週間かけて大西洋を横断、28日、マンハッタンのふ頭に到着しました。
約200人が出迎え、歓迎のために訪れた17歳の男性は「彼女が起こした行動がこれほど大きな波になるとは想像できませんでした。ニューヨークでも若い人々の心に訴えかけて行動の波を広げてくれると思います」と話していました。
2019年9月「次の機会にも参加して」
ニューヨークに到着したグレタさんは、国連総会を前に活発に活動を続けます。
恒例の金曜日となる9月13日、首都ワシントンで地元の高校生と
集会を開きました。グレタさんは「私と一緒に行動してくれてありがとう。次の機会にも参加してください」と呼びかけていました。
2019年9月 「良心の大使」受賞
国際的な人権団体「アムネスティ・インターナショナル」から人権を守るために活躍した人に贈られる「良心の大使」の賞を受賞。16日の授賞式でも「世界での温室効果ガスの排出量は今も増え続けている。今こそ行動するときです。誰もが変化を生み出す力を持っているのです」と力強く呼びかけ、会場は大きな拍手に包まれました。
2019年9月 オバマ前大統領「世界を変えているね」
9月18日にはオバマ前大統領と面会し、オバマ氏から「世界を変えているね」などと声をかけられると、グレタさんは「若者たちは皆、熱心です。どんな小さな個人でも世界に影響を与え、変化をもたらすことはできます」と応じていました。
この日は、アメリカ議会下院の公聴会にも出席して訴えました。
「私の言葉ではなく、科学者の声に耳を傾けてください。科学のもとに皆が団結し行動してほしいのです」
2019年9月 世界150か国 400万人 過去最大規模のデモ
9月21日、国連の温暖化対策サミットを前に若者が中心になって温暖化対策を訴えるデモが世界各国で一斉に行われました。
ニューヨークやベルリンなどでは参加者が数十万人規模となり、主催者側は世界全体でデモの参加者が400万人を超えたとして、温暖化対策を求めるデモとしては過去最大だとしています。ニューヨークのデモでグレタさんも訴えました。
「私たちはただ傍観するつもりはない。科学のもとに団結している。世界の首脳の目を覚まさせ行動を起こさせたい! 私たちには安全な未来を得る権利がある!」
今回のデモでニューヨーク市の教育局は、公立学校の児童、生徒100万人以上に学校を休んで温暖化対策を訴えるデモに参加することを許可する異例の対応を取りました。
2019年9月 温暖化対策サミット 怒りと涙の訴え
9月23日、国連の温暖化対策サミットでグレタさんは各国の代表を前に演説しました。
「私が伝えたいことは、私たちはあなた方を見ているということです。そもそも、すべてが間違っているのです。私はここにいるべきではありません。私は海の反対側で、学校に通っているべきなのです」と語り始めたグレタさん。「すべての未来の世代の目はあなた方に向けられています。私たちを裏切るなら決して許しません」と強い口調で非難し、早急な温暖化対策を求めました。
訴えはトランプ大統領にも届くか…
地球温暖化対策に懐疑的なことで知られるトランプ大統領は当初、温暖化対策サミットに出席する予定はありませんでしたが、急きょ姿を見せ、周囲を驚かせました。15分程度で退席し発言はしませんでした。グレタさんの演説を会場で聴くこともありませんでした。
温暖化対策を求める機運 かつてなく高まる
地球温暖化対策を求める機運はかつてなく高まっています。そのきっかけともなった16歳のグレタ・トゥーンベリさん。
ことし12月には南米チリで行われる地球温暖化対策の会議「COP25」にも参加する予定です。