[マンチェスター(英国) 2日 ロイター] – ジョンソン英首相は2日、欧州連合(EU)に対し離脱協定案の最終的な代替案を示した。月末に控えた離脱期日に向け妥結につながる可能性はあるが、双方の立場にはなお隔たりがあり、EU側は控えめな歓迎を示している。
離脱交渉の争点であるアイルランド国境問題の解決策 「バックストップ(安全策)」を巡っては、英領北アイルランドとアイルランドの国境もしくは近辺にチェックポイントを置かず、全ての物品の国境検査を省略する規制ゾーンの設置を提案。北アイルランドは英国の関税制度の一部にとどまる一方、税関審査を回避するため、手続きを簡素化する制度を導入するとした。
また、2020年12月の移行期間の終了前に、北アイルランドの自治政府や議会が規制ゾーン継続の是非を決定し、その後も4年ごとに同様の判断を行うことも提案した。
ジョンソン首相は与党保守党の党大会で演説し、「双方が妥協できる建設的かつ妥当な提案を提示する」と表明。さらに、新提案が受け入れられなければ、残された道は「合意なき」離脱と強調。「何が起ころうと、英国は今月末にEUから離脱する」とし、強硬路線を堅持した。
その上で「われわれの友人が理解を示し、譲歩することを望む」とした。
欧州委員会のユンケル委員長は、ジョンソン氏の提案について、全ての物品を対象とする規制協定などは「前向きな進展」としつつも、「特に安全策の統治に関する部分など、今後数日で取り組むべき問題もいくつかある」と指摘。EUは合意を望んでおり、それに向け取り組む用意があると述べた。
バルニエEU首席交渉官も、提案は進展と言えるが解決すべき点はなおあると指摘。また、メイ前英首相の欧州顧問だったラウル・ルパレル氏は「EUとアイルランドがこの提案に合意するとは思えない」と悲観的な見方を示した。
英野党・労働党のコービン党首は、ジョンソン氏の提案はあまりに曖昧で、EUは受け入れないだろうと述べた。
このほか、EU外交官や高官らの間からは「根本的に欠陥がある」、「受け入れられることはない」との指摘が聞かれたほか、ある高官はロイターに対し「交渉の余地がないという内容であれば、離脱期限延期の方策について協議を開始するほうが良いだろう」と述べた。
ドイツ銀は、50%の確率で年末までに合意なき離脱という結果になることを見込んでいる。