[デンバー(米コロラド州) 8日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は8日、世界経済へのリスクを背景に追加利下げにオープンな姿勢を示唆した。また、短期金融市場の円滑化を確実にするため、保有資産を再び拡大させる考えを示した。 

全米企業エコノミスト協会の会合で講演したパウエル議長は、追加利下げについて明言しなかったが、最近の経済指標の改定で3月までの雇用の伸びが従来より弱まる見込みだとし、「好調な」労働市場が緩やかな伸びに変化していると指摘。また、製造業の低迷などを示す指標も経済が鈍化しつつあるという見方を強めていると語った。 

先月に起きた米短期金融市場での金利急騰を巡っては、FRBがバランスシート縮小を進め過ぎたとの懸念が浮上していた。こうした混乱を回避するため、市場ではFRBに恒常策の導入を求める声が高まっている。 

パウエル議長はこれについて、「準備金供給を時間をかけて増やす措置を近く発表する」と表明した。 

FRBはここ数カ月、バランスシートを縮小しているが、パウエル議長は、バランスシートの再拡大は景気刺激策と捉えるべきでなく、市中の現金需要や銀行の準備金需要を満たし、その他のFRBの機能を実行するためのものだと説明した。 

経済見通しについては引き続き「好ましい」とし、成長継続のシナリオが「最も公算が高い」と述べた。ただ、政策当局者は過去1年にわたり「適切な金融政策についての見解をフェデラルファンド(FF)金利低下の方向にシフトしてきた」と言及し、既に0.5%利下げしたと指摘。 

こうした措置は「見通しを下支えしている」としながらも、世界的なリスクが拡大する中、FRBは10年来の成長持続へ「適切」に行動すると繰り返した。 

また、「データを注視し、見通しと見通しに対するリスクを会合ごとに精査する。全てを考慮し、適切に行動する」と強調。「今後、政策は前もって設定した道筋にはない」と述べた。 

先月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、当局者17人のうち7人が年末までにあと0.25%の利下げが必要になるとの見方を示しており、市場では既に織り込まれている。 

アルビオン・フィナンシャルグループのジェイソン・ウェア最高投資責任者は「パウエル氏は、FRBが引き続き下向きリスクを認識し、必要なら経済拡大を支援する決意があるということを落ち着いたトーンで市場に示そうとしているようだ」と述べた。 

パウエル議長の講演を受け、米国債は買われ、米株式は下げ幅を縮小した。