[ニューヨーク 12日 ロイター] – トランプ米大統領は12日、ニューヨークのエコノミック・クラブで講演を行い、米中の「第1段階」の通商合意が間近であると表明した。同時に米国に恩恵をもたらすものでなければ受け入れないとも強調した。一方、協定署名の日時や開催地などには一切触れず、詳細の発表を見込んでいた向きには期待外れの内容となった。 

講演では好調な株価動向が自身の経済・貿易政策の評価であると指摘。さらに、米金利が他国よりも高水準にあっても米経済が好況となっているのは自身の功績だと自負した。 

トランプ氏は「中国は妥結したくてたまらないが、妥結するかどうかを決めるのはわれわれだ。(合意は)近い。第1段階の通商合意はまもなく実現する可能性がある。しかし米国や米労働者、偉大な米国企業にとって好ましいものでなければ受け入れない」と語った。 

また、中国が米国と妥結しない場合、中国製品に対する関税を大幅に引き上げると警告。「中国以外にも米国を不当に扱う国々には同様の措置を取る」と明言した。 

通商問題を巡っては日本とも鋭意交渉を進めているとしたほか、欧州連合(EU)が不当な貿易障壁を設けており、中国よりもひどいと主張した。 

BMOキャピタル(ニューヨーク)の国際外為戦略部長、グレッグ・アンダーソン氏は「トランプ氏の講演に新味はなかった」とし、リスク選好は後退したと指摘した。 

連邦準備理事会(FRB)の金融政策については、政策により米国が他国との競争で不利な形勢に追い込まれていると批判し、マイナス金利を導入するよう改めて要求した。 

トランプ氏は「米国は公然と利下げしている国々と競争している」と指摘。「これらの多くは債務を返済することで金を受け取っている。これがマイナス金利というものだ」とし「こうした資金の一部をもらいたいものだ。FRBはわれわれにそうはさせてくれない」と批判した。FRBは2015年終盤から9回の利上げを実施。今年7月以降は3回の利下げに踏み切っている。 

その他、米軍特殊部隊による急襲作戦で殺害された過激派組織「イスラム国」(IS)のバグダディ容疑者に関連し、米国はナンバー3に目を付けていると表明。「われわれはこの人物の居場所を特定している。非常に問題のある人物だ」と述べた。名前などには言及しなかった。 

米国はバグダディ容疑者の後継者と目されていたISの広報担当幹部、アブ・アル・ハッサン・アル・ムハジル氏も殺害している。ISはアブイブラヒム・ハシミ・クラシ氏をバグダディ容疑者の後継者に指名している。