日経新聞が本日の1面トップで、嵩む医療費の実態を特集している。「漂流する社会保障」とサブタイトルされたこの記事は、75歳以上の後期高齢者が支払っている一人当たりの年間医療費を自治体別にランキングした。トップは長崎県で年間130万2769円になる。月額に直せば約10万8000円だ。この数字はあくまでも平均に過ぎない。個別で見れば後期高齢者の中には、相当高額の医療費がかかっている人もいるだろう。このうち実際に後期高齢者本人が支払うのは窓口負担の1割。金額にすれば1万8000円。残りは国や健保組合などが負担している。

2022年には団塊世代が後期高齢者入りする。医療費の負担は鰻上りに増える。こうした事態にどう対応するか、政府は現在「全世代型社会保障検討会議」を設置して高齢化に対応した社会保障のあり方を検討している。昨年12月19日に中間報告が発表されている。医療については、「人生100年時代、国民の安心を確保するため、国民一人一人の自主的な取組を可能とする環境を整備するとともに、地域包括ケアシステムの構築、さらには地域共生社会の実現に向けた取組を進めることが重要。疾病予防・早期対応から(病後の)生活を支える医療のあるべき姿を見据え、地域医療の基盤を維持していくことが必要である」とある。文面上からは切迫感や緊張感は伝わってこない。

2017年度(予算ベース)に後期高齢者にかかった費用は約15.4兆円にのぼる。内訳は公費が7.3兆円、支援金6.4兆円、保険料1.7兆円。支援金は公費をはじめ健保組合や協会けんぽからの支出分だ。サラリーマンは健保の保険料の一部で、後期高齢者の医療費を負担している。2022年以降のこの医療費が急増する。これにどう対応するか、政府は一定の収入のある人を対象に窓口負担を1割から2割に増やすとしている。一定の収入をいくらにするか、これから議論する。何れにしても窓口負担の部分的な引き上げだけでは解決しないだろう。さらなる対策が必要だが、「国民一人一人の自主的な取組を可能とする環境を整備する」という中間報告の一文が気になる。