ルノーの新CEOに就くルカ・デメオ氏=AFP時事
仏自動車大手ルノーは28日、空席となっている最高経営責任者(CEO)に独フォルクスワーゲン(VW)傘下の自動車メーカー、セアトのルカ・デメオ前CEO(52)を起用する人事を発表した。7月1日付。昨年10月に解任されたティエリー・ボロレ前CEOに代わり、日産自動車との提携関係をどう強化するかが課題となる。
デメオ氏はルノーやトヨタ自動車、フィアット(現フィアット・クライスラー・オートモービルズ〈FCA〉)などを経て、2009年にマーケティング責任者としてVWグループに入り、15年にセアトのCEOに就いた。仏メディアによると、SUV(スポーツ用多目的車)の投入などで販売を強化し、業績を回復させた実績がルノーに高く評価された。イタリア出身で、英語や仏語など5カ国語を話すという。セアトは19年、欧州を中心に過去最高の57万4千台を販売した。
ルノーはボロレ氏の解任後、社外からの起用を含めて後任の人選を進めていた。ジャンドミニク・スナール会長は「アライアンス(連携)の必要性と、国際的な文化を理解できる」人物を起用したい考えを示していた。デメオ氏の就任までは、クロチルド・デルボス最高財務責任者(CFO)が暫定的にCEOの兼務を続ける。
ボロレ氏はルノーと日産の両方で経営トップを兼ねていたカルロス・ゴーン前会長の側近。前会長の失脚後、昨年1月にルノーCEOに昇格したばかりだった。仏紙ルモンドによると、ボロレ氏は解任される直前の昨年10月、日産の取締役会に10ページの書簡を送付。日産の経営について「密告や情報の滞留が経営陣に横行し、ルノーは情報をメディアを通して知らされている」などと批判していたという。(パリ=疋田多揚)