ことしの春闘は11日集中回答日を迎え、非正規雇用の従業員が多い流通・サービス業では、人手不足などを背景に非正規の賃上げ率が正社員を上回る回答が相次ぎました。
流通・サービス業や繊維、化学などの労働組合が加盟するUAゼンセンは11日夜になって経営側の回答が相次いで入り、交渉が妥結しました。
人手不足に加えて来月からは大企業を対象に同じ内容の仕事に対して同じ水準の賃金を支払う「同一労働同一賃金」が始まることから、格差是正に向けパートの賃上げ率が正社員を上回る回答が相次ぎました。
このうちドラッグストアの「ウエルシア」は正社員の賃上げ率をパートが上回り、時給を32円引き上げたほか、総合スーパーの「イトーヨーカドー」も時給にして20円引き上げました。
ことしの春闘は新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済の先行きに不透明感が増し、全体としては賃上げの勢いにブレーキがかかる中、今後、本格化する中小企業の交渉への影響が注目されます。
UAゼンセンの松浦昭彦会長は「新型コロナウイルスの感染拡大で経営側にとっては厳しい状況だと思うが、特に非正規雇用の賃上げについて、去年を上回る水準の回答が多くなっている。引き続き格差是正が進むよう中小の組合の交渉をしっかり支援していきたい」と話していました。
賃上げの勢いにブレーキ
春闘は、11日最大のヤマ場となる集中回答日を迎え、自動車や電機などの大手企業の経営側が、一斉に組合側に回答を示しました。
自動車業界では、トヨタ自動車とマツダが、7年ぶりにベアをゼロとする回答を示し、定期昇給などを含めた賃上げの総額も去年の妥結額を下回りました。
鉄鋼業界でも日本製鉄など大手3社がそろって、再来年度までの2年分について、ベアに相当する賃上げを見送るなど厳しい回答となりました。
その一方で、外食業界では「すき家」などを運営する「ゼンショーホールディングス」が、去年を上回る水準のベアで妥結するなど、一部で賃上げの動きもありました。
ただ全体としては、新型コロナウイルスの感染拡大で景気の先行きに対する不透明感が一段と増す中、賃上げに慎重な経営側の姿勢が目立ち、政府による経済界への要請を背景にした賃上げの勢いにブレーキがかかる形となりました。
「消費回復の勢いに悪い影響与える可能性も」
ことしの春闘について第一生命経済研究所、熊野英生首席エコノミストは「新型コロナウイルスの感染拡大の収束が見えてくると落ち込んでいる消費の盛り返しが期待される。しかし、ベアに乏しい今回の結果が、消費回復の勢いに悪い影響を与える可能性もある」と話し、景気に与える影響を懸念しています。