• ECB政策委員会、中銀預金金利をマイナス0.5%で据え置き
  • 銀行向け条件付き長期リファイナンスオペ、より借り手に有利に

欧州中央銀行(ECB)は12日、新型コロナウイルスの経済的な影響を緩和する金融政策パッケージを発表した。債券購入および銀行への長期貸し付けプログラムを拡大する。一方で、政策金利は据え置いた。

  ラガルド総裁は世界の成長見通しに対する「重大なショック」が生じていると警告。企業活動と銀行融資の継続を支えるため「包括的パッケージ」を打ち出したと説明した。

  ECBは市場の利下げ期待に反して金利を据え置いたが、債券購入を拡大し、中銀預金金利をも下回る金利で長期資金を供給することを決めた。

  政策委員会が決定した措置は以下の通り。

  • 追加の長期リファイナンスオペによって銀行に直ちに流動性を供給する
  • 条件付き長期リファイナンスオペ第3弾(TLTRO3)はより借り手に有利な条件とする
  • 民間部門を中心に追加で1200億ユーロ(約14兆円)の資産を購入する
  • ECBの銀行監督部門は銀行の資本要件を一時的に緩和する
European Central Bank President Christine Lagarde Announces Rate Decision
記者会見するラガルドECB総裁(12日、フランクフルト)

  TLTRO3は、事実上の二重金利構造をつくり出すことになりそうだ。このプログラムを通じて銀行に提供される金利は、現在マイナス0.5%の中銀預金金利を最大で0.25ポイント下回る水準となる。  

  また、TLTRO3は「コロナウイルス感染拡大の影響を最も受けている中小企業などに融資する銀行を支える」ようにするという。資本要件緩和と並んで、銀行融資を促進するのが狙い。  

  量的緩和(QE)拡大は金融システムに流動性を注入する。ECBは追加購入分を社債中心に振り向けることを示唆し、「不確実性の高まった時期に実体経済の良好な金融環境を支える」と説明した。

  ラガルド総裁はユーロ圏経済について、経済データはすでに見通しの大幅な悪化を示唆していると述べ、今回の政策決定までの間に新型コロナが「市場のボラティリティーを高めた」と指摘した。域内経済の今年の成長率を「著しく」引き下げたECBの新たな経済予測も明らかにした。

  各国政府にはECBのパッケージに匹敵するような「大胆で協調した財政政策対応」を呼び掛け、「断固として決意を持った」行動を次回のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が開かれる16日にも打ち出すよう求めた。「各国政府および他の全ての政策機関に、タイムリーかつ的を絞った行動を取る」よう訴えた。

原題:Lagarde Unveils Surgical Aid for Economy With New ECB StimulusLagarde Unveils Surgical Aid for Growth With ECB Stimulus (1)(抜粋)