[ワシントン 11日 ロイター] – 米労働省が11日発表した6月6日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比35万5000件減の154万2000件となった。企業のレイオフ(一時帰休)が減ってきたとはいえ、引き続き数千万人もの人が失業手当を受けており、新型コロナウイルス禍に見舞われた労働市場が回復するには何年もかかる恐れがある。
申請件数は10週連続で減少。3月下旬には過去最悪の686万7000件に達していた。
ロイターのエコノミスト予想は155万件。
PNCフィナンシャルの首席エコノミスト、ガス・フォーシャー氏は「労働市場は最悪期を脱したようだが、新型コロナ流行が引き起こしたリセッションを背景に引き続き厳しい状況にある」と指摘した。
5月30日終了週の失業保険受給総数は前週比33万9000件減の2092万9000件。5月初旬には過去最悪の2491万2000人に増加していた。
7日終了週の自営業者や単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」などに適用されるパンデミック失業支援(PUA)の申請件数は前週比9万1137件減の70万5676件。
5月23日終了週時点で何らかの失業保険を受けていた人は2950万人。前週からは66万2256人減少した。
INGの首席国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「コロナ危機がもたらしたストレスは経済全体に広がっている」とし、「企業業績は期待ほど速いペースで回復しておらず、企業はレイオフを余儀なくされている」と述べた。
米連邦準備理事会(FRB)は9─10日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で異例の経済支援を継続すると改めて表明し、失業率は年末時点で9.3%になるとの見通しを示した。パウエルFRB議長は失業した人々が再び職に就くには何年もかかる可能性があると指摘し、「長い道のりだ。しばらく時間がかかる」と語った。
先週末に発表された5月の雇用統計で非農業部門雇用者数が250万人増加したことから、労働市場は最悪期を乗り切ったとの見方が強まった。しかし失業保険申請件数は依然、2007—09年の金融危機時に記録したピークの2倍以上に膨らんでいる。
新型コロナの感染拡大を遅らせるため3月中旬に導入された都市封鎖(ロックダウン)は緩和してきたが、当初は閉鎖の影響を受けなかった産業などでも雇用削減が実施されていることから失業保険申請は高止まっているとみられる。
オックスフォード・エコノミクス(ニューヨーク)の主任米国エコノミスト、ナンシー・バンデン・ホーテン氏は「失業保険申請が着実に減少しているのは明るい材料だが、労働市場はトラウマとなる打撃を受けており、完全な回復は数週間や数カ月ではなく、数年単位で測られるだろう」と指摘。また、統計内容はコロナ禍が労働者に及ぼす影響を完全に映していないと述べた。