[10日 ロイター] – 北半球で一段と気温が上昇する季節が訪れた。夏になると新型コロナウイルス感染症の拡大は、鈍化し得るのだろうか。専門家の研究結果をまとめた。
温帯域では通常、気温が上がる季節になるとインフルエンザの流行シーズンが終わる。しかし、天候だけでは全地球上での新型コロナ流行は止まらないようだ。実際のところ、暑かったり日当たりが良かったりするブラジルやエジプトでも、流行は広がっている。
ただ、日光や湿度、屋外の風の具合などが新型コロナにどう影響するかについての最近の研究データでは、夏に流行が鈍化するかもしれないという楽観論にも、やや根拠を与えている。
<新型コロナは季節性か>
季節性があると確認できるほど新型コロナは、発生からまだ長くたっていない。
インフルエンザや普通の風邪のような呼吸器感染症の流行は、温帯域では季節的なパターンがある。低い外気温、低い室内湿度、室内滞在時間の増加といった環境条件は、いずれも感染拡大を加速させる可能性がある。
新型コロナへの天気の影響に関する実証結果はまちまちだ。
中国の221都市を対象にした1つの調査では、気温、湿度、日光は感染拡大の速度に影響していなかった。
一方、影響しているとの研究も2つある。47カ国で新規感染を調べた研究では、フィリピンやオーストラリア、ブラジルなどでは、気温上昇と感染ペース鈍化に連関性が見られた。117カ国を対象にした研究では、緯度が赤道から1度離れるごとに感染例が2.6%ずつ増加。この研究は「北半球では夏は新型コロナ新規感染が減るかもしれず、冬に再び増加するかもしれない」との結論を出している。
ただ、世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者、マイク・ライアン氏は「季節や気温が(感染速度の)答えになるとの期待に頼ることはできない」とくぎを刺している。
<夏と冬で感染拡大に違いが出る理由>
英レディング大の細胞微生物学専門家、サイモン・クラーク氏によると、寒い季節がせきや風邪、インフルエンザを引き起こすと推定される理由は、冷たい空気によって鼻腔や気管が刺激され、ウイルスに感染しやすくするためだ。
冬はより長い時間を室内で過ごさせる効果があるが、夏もエアコンが屋内滞在をもたらす可能性がある。
米政府の調査チームによる研究室実験では、気温と湿度が上昇すると物体の表面に付着した新型コロナのウイルス粒子は、人間への感染能力を急速に失うとされた。日光にさらされると特にその速度が速いとの結果も出た。
専門家によると、夏でも頻繁に手洗いし、対人距離を取って、マスクを着けることが引き続き推奨される。感染者がせきや呼吸をする場合、屋外での方が排出されるウイルス粒子が速く広がり、唾液の飛沫の場合は微風でも最大6メートル運ばれるとの研究結果もある。
<他に夏のメリットはありそうか>
ビタミンDだ。免疫をつかさどるビタミンDの血中濃度が、新型コロナへの感染のしやすさや、感染した場合の症状の進行にどう影響するかを調べている研究者もいる。体内のビタミンDの大部分は、皮膚が日光を浴びることで生成される。
もう1つは花粉だ。新型コロナを含むインフルエンザ的疾病についてオランダで近年行われた研究によると、呼吸器系疾病の流行を読む上では、大気中の花粉濃度が日光より有益。雲状の花粉が空気フィルターのように働き、ウイルス粒子が体内に入るのを防ぐほか、明らかな花粉アレルギーがない人でさえも免疫反応を活性化させるという。
この研究では、大気中の花粉濃度が1立方メートル当たり610個に達すると、インフルエンザ的な疾病が減り始めるとの結果が出た。地球の中緯度地域のほとんどで、春の初めから10月にかけてが通常、この花粉濃度になる。