• 共同連絡事務所の破壊は「愚かな行動」-韓国
  • 北朝鮮の行動は韓国との関係を「完全に断つ強い意志」-世宗研究所
Korean joint liaison office in Kaesong, North Korea.
Korean joint liaison office in Kaesong, North Korea. Source: Pool/Getty Images AsiaPac

北朝鮮が16日、開城工業団地内にある南北共同連絡事務所を爆破した。韓国政府への強い挑発行為で世界の注意を引くことが狙いで、差し迫った戦争のリスクはほぼないとみられる。

  北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は2018年の南北首脳会談の成果の象徴である共同連絡事務所が、「見事な爆発で無残に破壊された」と発表した。

  韓国の統一省は事実上の大使館として機能していた事務所の破壊について「愚かな行動」で、「朝鮮半島の平和を願う人々の希望を打ち砕いた」と批判した。国家安全保障会議(NSC)は、北朝鮮がさらなる行動を取る場合、韓国は強力に対応すると表明したが、直ちに報復することは示唆しなかった。

  金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一相は、北朝鮮の動きは「予想されたもの」だと述べた上で、状況を一段としっかり見守る必要があると語った。

  共同連絡事務所は韓国が180億ウォン(現在のレートで約16億円)拠出して2年前に開設。南北が常に連絡を取り合える場となっていたが、北朝鮮は1週間ほど前に事務所の活動を停止していた。

  北朝鮮は米主導の制裁を支持し続ける文在寅政権へのいら立ちを募らせており、連絡事務所爆破は、時に米政権のタカ派からの批判にさらされながらも南北融和に積極的に取り組んできた文大統領に対して、軍事的な挑発ではない形で圧力を強めようとしたとみられる。

  北朝鮮はこの日先に、朝鮮人民軍を南北の軍事境界線がある非武装地帯(DMZ)に進出させる計画を検討しているとも表明していた。 

  非営利組織の国際危機グループ(ICG)で北東アジアおよび核関連政策について助言するシニアアドバイザーの金杜妍氏は、「北朝鮮は同様の軍事行動を続けると思われるが、韓国側の軍事的報復を誘うようなことはしないだろう」と述べた。共同事務所は本質的に既に機能していなかったとも指摘した。

  南北共同連絡事務所の爆破後、北京での定例記者会見で中国外務省の趙立堅報道官は、朝鮮半島の平和を中国は常に望んでいると述べたが、南北の共同事務所には言及しなかった。 

  世宗研究所の鄭成長氏は、北朝鮮の行動は韓国との関係を「完全に断つ強い意志」を示していると指摘。「北朝鮮は開城工業団地の再軍事化を目指している。共同連絡事務所爆破はその第一歩にすぎない」との見方を示した。

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南北共同連絡事務所の開設式典(2018年9月)

原題:North Korea Destroys South Korea Joint Office in Rebuke to SeoulKim Jong Un Destroys Joint Korea Office in Rebuke to Seoul (1)(抜粋)