- 今年の世界GDPは4.9%減へ-4月時点の予想は3%減だった
- 金融市場と経済見通しの間に「分断がある」ように見受けられる
国際通貨基金(IMF)は24日、新型コロナウイルスで打撃を受けている世界経済の見通しを一段と引き下げた。2カ月前の時点よりも深刻なリセッション(景気後退)と景気回復の遅れを予想している。
最新の世界経済見通し(WEO)でIMFは、今年の世界の国内総生産(GDP)が4.9%のマイナス成長になると予想。4月時点の予想は3%のマイナス成長だった。2021年については前回予想の5.8%増から5.4%増に引き下げた。
大恐慌以来最悪の景気低迷を警告してきたIMFだが、悲観的見方が強まったのは、ソーシャルディスタンス(社会的距離の確保)などの安全対策による需要への打撃が続いていることに加え、ロックダウン(都市封鎖)措置による供給ショックが予想以上に大きかったことを反映していると説明。新型コロナの流行を抑制できていない国では、ロックダウンの長期化が成長を阻害することになるとも指摘した。
IMFは「パンデミック(世界的大流行)の容赦ない拡大により、生活や雇用確保、不平等への長期的なマイナス影響の可能性が一段と高まった」としている。
また、世界の金融市場のセンチメント回復と「基調的な経済見通しの変化には分断があるように見受けられる」とも警告し、中核的なシナリオで想定しているよりも金融情勢が引き締まる可能性に言及した。
IMFはほとんどの国の消費見通しを引き下げ、その理由として、予想以上の国内活動の混乱、ソーシャルディスタンスによる需要ショック、予備的貯蓄の増加を挙げた。
過去数週間、IMFは4月時点の予想を引き下げる可能性が高いと繰り返し警鐘を鳴らしてきた。先月8日には、チーフエコノミストのギータ・ゴピナート氏が世界経済の見通し悪化を指摘していた。
IMFは今回の見通しについて、パンデミックとロックダウンの期間などによって修正される可能性があると説明。医療面で大きな進展があったり、経済活動が一段と早く再開したりした場合は上方修正の可能性もあるとしている。
ただ、さらなるロックダウンが必要となる感染拡大や金融情勢の悪化といった大きな下振れリスクがあると指摘。「これが一部の国を債務危機に陥れ、活動をさらに鈍化させる恐れがある」と警戒感を示した。
今年の米国GDPの予想は、前回の5.9%減から8%減に下方修正。来年は4.5%増を予想している。ユーロ圏GDPは今年が10.2%減、来年が6%増と見込んでいる。日本の今年のGDP予想は5.2%減から5.8%減に下方修正された。
IMFが最大の落ち込みになると予想している先進国のGDPは、前回の6.1%減から8%減に引き下げられた。新興国と発展途上国は1%減から3%減に下方修正。中国は景気刺激策に支えられて1%のプラス成長を維持する見込みだとしている。
IMFは、2つの別のシナリオも提示している。1つ目は、来年初めに新型コロナ感染第2波が発生するというもので、その場合、所得を支える余地が限られている新興国の方が先進国より大きな打撃を受けると想定し、来年の世界GDPは基本シナリオを4.9%下回ることになるとしている。
回復が予想より速いペースで進むという2つ目シナリオの場合、基本シナリオに比べて世界GDPは今年で約0.5ポイント、来年で3%改善すると見込んでいる。
原題:IMF Forecasts Deeper Global Recession From Growing Virus Threat(抜粋)