【ロンドン=板東和正】世界貿易機関(WTO・本部ジュネーブ)は8日、次期事務局長選の候補者受け付けを締め切った。韓国産業通商資源省の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長ら8候補が届け出を済ませた。次期事務局長選は新たな通商政策の主導権をめぐる争いに発展する可能性もあり、今後の選出が注目される。
候補者は、兪氏のほか、ナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相▽ケニアのスポーツ・文化・遺産相のモハメド氏▽メキシコのセアデ元WTO事務次長▽エジプトの元WTO高官のマムドゥ氏▽モルドバのウリヤノブスキ元外相▽サウジアラビアのトワイジリ元経済・企画相▽英国のフォックス前国際貿易相。WTOの歴代の事務局長に女性はいないが、今回の候補者のうち3人が女性となった。
候補者は15~17日の一般理事会で、加盟国を前に演説や質疑応答を行う。加盟国の協議を経て絞り込まれていき、最終的に残った1人が、一般理事会で加盟国に承認される見通し。ロイター通信によると、選出には通常9カ月を要するが、WTOは3カ月で行いたいと考えているという。
WTO事務局長の選出は合意形成を重視するため、投票は原則、行われない。今後は選出に向け、各国間の折衝が本格化するとみられる。立候補した兪氏は昨年9月、ソウルでの記者会見で、日本による半導体材料の輸出管理厳格化をめぐって、日本をWTOに提訴すると発表した人物。韓国出身の事務局長が誕生した場合、日本の通商政策にとって不安要素になりかねないとの見方もある。
次期事務局長選は、WTOのアゼベド事務局長が今年5月、8月末で辞任すると表明したことを受けて実施が決定した。WTOは、米国が上級委員会の委員の選任を拒否したことから、紛争処理の機能停止に陥っており、混乱が続く中でのトップ辞任表明となった。