中国共産党の指導部や長老らが中国河北省の避暑地に集まり、重要事項を協議する非公式会議「北戴河会議」が5日までに始まったもようだ。米国との対立激化や新型コロナウイルスによる経済的打撃といった内憂外患への対応を協議する見通し。習近平国家主席は新型コロナの影響を名目に会議を中止し、習氏に不満を持つ長老らから政権運営への批判を受けるのを回避することもできた。あえて開催に踏み切ったのは、党をまとめる自らの権力基盤は揺るがないとの自信の表れといえそうだ。
北戴河の高速道路出口では3日、自動小銃を持った武装警察隊員らが厳戒。身分証を調べ、外国人記者とわかるとパトカーで公安分局(警察署)に連行し、3時間にわたって拘束した。
「今は適切な時期ではない。言わなくてもわかるだろう」。警察側は記者に北京へ戻るよう要求。交渉の結果、党幹部らが滞在するエリアから離れた海岸や鉄道駅を訪れることだけ警察官の同行を条件に認めた。
今年は新型コロナの感染防止などを理由に会議を開かないとの観測も出ていたが、こうした厳戒態勢は開催を裏付けるものだ。
ただ街の様子は以前と様変わりしていた。記者が前回訪れた2018年と異なり、今年は党中央への「団結」や「奮闘」を求める政治スローガン自体も激減。簡素化された背景には、新型コロナの経済的影響が深刻で、中南部では洪水被害も広がる中、多数の党幹部らがリゾート地に滞在している現状を国民に知らせたくないとの思惑もにじむ。
北戴河会議は毛沢東時代に始まり、重要政策について党内のコンセンサスを醸成する機会。日程や参加者は公表されず、引退した長老たちは現指導部に意見も表明する。
ただ消息筋によると、習氏自身は昨年と一昨年は出席しなかった。18年には、習氏による権力集中と個人崇拝的な政治路線に対し、江沢民元国家主席ら長老たちから修正を求める声が上がったとの情報もあるが、習指導部の路線が大きく転換した形跡はない。習氏を現実に引きずりおろす力がある政治勢力は存在せず、習氏は会議を長老らの“ガス抜き”の場として利用しているともいえる。