10日、香港警察に連行される黎智英氏(右から2人目)(AP)
10日、香港警察に連行される黎智英氏(右から2人目)(AP)

【香港=藤本欣也】香港警察は10日、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えたなどとして、香港紙、蘋果(ひんか)日報の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏(71)と同紙幹部ら少なくとも7人を香港国家安全維持法(国安法)違反などの容疑で逮捕した。

 同紙は香港政府や中国共産党への批判的な論調で知られる。警察は同日、同紙を発行する壱伝媒(ネクスト・デジタル)本社を家宅捜索した。黎氏の息子2人も逮捕された。この日の捜査は香港警察内に設けられた国安法部門が指揮した。

 実業家の黎氏は香港民主化運動の有力な支援者。6月30日に施行された国安法の違反容疑で民主化運動の主要人物が逮捕されたのは初めて。主要メンバーの逮捕が相次ぐ可能性がある。

 黎氏は昨年、米国でペンス副大統領やポンペオ国務長官らと面会。中国当局は反政府デモの「黒幕」「民族のくず」「米英の走狗(そうく)」などと非難していた。

 中国・香港当局は、トランプ米政権による香港の林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官ら高官への制裁発動に、黎氏逮捕で応じた。米国など国際社会のさらなる反発は必至だ。

 黎氏は国安法施行前の6月下旬、産経新聞のインタビューに「国安法により一国二制度の香港は死に至る」と述べ、「私は(同法違反容疑で)逮捕、収監されるだろう。(公判では)法治と自由の重要性を訴えていく」と語っていた。

 黎氏は今年2月と4月にも、違法集会に参加したなどとして逮捕・起訴され、保釈中だった。

■香港国家安全維持法(国安法) 香港での反政府活動を取り締まる法律。統制強化を狙う中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が6月30日に可決・成立させ、同日施行された。最高刑は無期懲役。1997年に英国から返還された後、中国が香港の高度な自治を50年間にわたって保障した「一国二制度」が形骸化される形となり、国際社会に懸念が広がる。