[オムスク 21日 ロイター] – モスクワに向かう旅客機の中で体調不良を訴えシベリアのオムスクの病院に緊急搬送されたロシア反体制派指導者ナワリヌイ氏を巡って、ロシアの医師団は21日、治療のため同氏をドイツに移送することを認めた。一方、同氏が何者かに毒を盛られたとの見方については否定した。 

オムスク病院のカリニチェンコ医師は「ナワリヌイ氏を別の病院に移送することに反対しないことを医師団として決めた」とした上で、ナワリヌイ氏は数時間以内に移送されると述べた。 

またムラホフスキー主任医師は、ナワリヌイ氏の衣服や指から工業用化学物質が検出されており、毒は盛られていないと判断されると表明した。 

病院スタッフによると、ナワリヌイ氏は、生命にかかわるような危機に直面しておらず、誘発性の昏睡状態にあり、脳は安定しているという。 

ナワリヌイ氏の広報担当者は、同氏が22日朝に移送される見通しと述べた。 

医師団は当初、ナワリヌイ氏が依然として意識不明で容体が安定せず、動かせば命の危険があるとして、移送に難色を示していた。 

これに先立ち、妻のユリヤ氏らは、ナワリヌイ氏をドイツに移送して治療を受けることを希望。ユリヤ氏は、プーチン大統領宛てに対応を求める嘆願書を提出し「夫をドイツへ移送することを認めていただけるよう、公式に要請する」と訴えた。 

ナワリヌイ氏は20日、空港で紅茶を飲んで搭乗し、機中で体調が急変。飛行機はシベリアに緊急着陸し、救急搬送された。同氏の関係者は、毒を盛られたとみている。 

ナワリヌイ氏の広報担当者はシベリアの病院は医療体制が不十分でナワリヌイ氏は生命の危険に陥っているとして政権を批判。広報担当者はソーシャルメディアに「(ナワリヌイ氏の)移送禁止は、それを認めた当局と医師団に命を委ねようとしていることになる」と投稿した。 

報道担当者によると、医師団は当初は移送に同意していたが、直前になって翻意した。「この決定はもちろん、医師団ではなくクレムリンが下したものだ」と指摘した。 

ロシア大統領府は20日、欧州の医療機関への移送要求があれば、医療当局が直ちに検討すると説明していた。 

主治医は記者団に、ナワリヌイ氏を欧州の医師に引き渡す前に解決すべき多くの法的問題があると説明。欧州と比べて遜色ない医師団がモスクワから治療のため到着していると話した。 

ナワリヌイ氏の関係者らによると、ある警官が、同氏から非常に危険な物質が検出されたと話した。その物質は、同氏の周囲にいた人にとっても危険で防護服を着用する必要があるほどだったという。ロイターはこの情報を確認できていない。 

関係者は、ロシア当局は、同氏から毒物の痕跡が消えるまで時間稼ぎしようとしていると指摘した。