[ニューヨーク 22日 ロイター] – トランプ米大統領は22日、国連総会の一般討論演説で、中国が「世界に感染を拡大させた」と批判し、「中国に責任を取らせる必要がある」と主張した。
11月の米大統領選を視野に演説は中国への批判に軸足を置き、対中強硬姿勢をアピールする内容となった。コロナ流行の影響で各国首脳と同様、演説は事前に収録された。
トランプ大統領は、中国がコロナ感染初期に国内での移動を制限しながらも、海外への渡航を認めたと批判。さらに「中国政府、中国に事実上操作されている世界保健機関(WHO)は、人から人への感染を示す証拠はないという誤った主張をした」とし、「その後、無症状であれば感染拡大はないと主張した。国連は中国の行動に責任を取らせなくてはならない」と訴えた。
また、コロナワクチンの配布を約束し、「ウイルスを打倒し、パンデミック(世界的大流行)を終結させる」と言明した。
一方、中国の習近平国家主席はコロナ対応で世界的な結束と協調を訴えると同時に、「冷戦や武力に訴える戦い」のいずれも展開する意向はないと強調した。
習氏は収録映像を通じた演説で、「科学に基づく指針に沿って、WHOが全面的に主導的役割を担い、連携した国際的対応が必要だ」とした上で「コロナを政治化し、汚名を着せようとする試みに反対しなければならない」とけん制した。
また、名指しは避けながらもトランプ氏を暗に批判し、「いかなる国も世界情勢を支配したり、他国の運命をコントロールしたり、発展の優位性を独り占めしたりする権利はない。ましてや、好き放題やり、世界の覇権国やいじめっ子、ボスになることを許されるべきではない。一国主義は行き詰まる」と主張した。
中国の張軍国連大使もトランプ氏の演説に対して声明を発表し、米国は対立を引き起こして分断を生み出すために国連という場を乱用していると批判した。
WHOもトランプ大統領の主張に反論。ツイッターへの投稿で、1月14日時点で人から人への感染の可能性を伝え、2月以降には無症状や発症前の人からの感染について可能性を指摘してきたと説明した。
一般討論演説に先立つ21日、習氏は国連創設から75年を記念する高官級会合でもビデオ演説をした。
習氏は「いかなる国家も世界情勢を支配したり、他の国の運命をコントロールしたり、発展の利益を独り占めしたりすることはできない」とし、「一国主義は行き止まりだ」と主張。トランプ氏の「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を暗に批判した。
グテレス国連事務総長は、米中対立を受けて世界が「非常に危険な方向に向かっている」と危惧を表明。「二大経済大国が独自の貿易・金融ルール、インターネットや人工知能の技術を持ち、世界を分裂させてしまうような未来を世界は望まない」とし、「新たな冷戦を避けるためにあらゆる手を尽くす必要がある」と訴えた。