[ロンドン/サンフランシスコ/東京 30日 ロイター] – 11月の米大統領選に向けたトランプ大統領とバイデン前副大統領による第1回テレビ討論会が異例の混沌状態となったことを受け、選挙結果の判明が遅れ、政権移行が混迷するとの懸念が投資家の間で広がっている。

トランプ大統領は29日の討論会で、新型コロナウイルス禍を背景に利用が急増するとみられる郵便投票が不正選挙を招くとの持論を改めて主張。「何万もの票が不正に操作されているのを見たら、(選挙結果を)受け入れることはできない」と語り、最高裁が大統領選の結果を判断する可能性もあるとの見方を示した。また、選挙に敗れた場合でも、平和的に政権を移譲することへのコミットメントを示さなかった。

パインブリッジのハニ・レッドハ氏は、討論会を受け「大統領選が泥沼化する可能性が浮き彫りとなった」と指摘。「市場はこの可能性を織り込み、選挙当日とその直後までボラティリティーの高まりが予想されている」と述べた。

投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX、恐怖指数).VIX先物の11、12月限の価格は上昇し、選挙後数週間に市場が乱高下する可能性が織り込まれた。

米株価先物EScv1は討論会を受けて、一時1%下落していたものの、米主要株価3指数はこの日軒並み上昇。ペロシ米下院議長とムニューシン米財務長官が、暗礁に乗り上げている新型コロナ経済対策を巡る交渉の打開に期待を示したことが材料視された。

レイモンド・ジェームズの欧州ストラテジスト、クリス・ベイリー氏は「米株先物の討論会前後の動きを比較すれば、市場の懸念は鮮明だ。選挙後の争いが主要懸念となっている」と指摘。アトランティック・キャピタル・マーケッツの取引ディレクター、ジョン・ウールフィット氏も「トランプ大統領は選挙後の闘争に向けた下地を整えた」と述べた。

初回の大統領選討論会は異例の非難合戦となり、トランプ大統領がバイデン氏を「頭が切れるところは何もない」と主張する一方、バイデン氏はトランプ氏を「役に立たない人」「人種差別主義者」「プーチン(ロシア大統領)の子犬」などと呼び、「あなたは史上最悪の大統領だ」とこき下ろした。また、トランプ大統領はバイデン氏の発言にたびたび割り込み、いらだったバイデン氏が「黙ってくれ。全く大統領らしくない振る舞いだ」と非難する場面もあった。

英ブックメーカー(賭け業者)ベットフェアによると、バイデン氏が大統領選で勝利する確率は60%と、討論会前の56%から上昇。トランプ氏の勝率は40%。

一部投資家の間では、バイデン氏の勝利は企業の増税につながる一方、減税や規制緩和を支持するトランプ大統領が再選されれば、株式市場に恩恵をもたらすと同時に、米中間の緊張悪化につながる可能性があるとみられている。