[ワシントン/ロサンゼルス 30日 ロイター] – トランプ米大統領は29日夜に行われた第1回大統領候補者討論会で、白人至上主義で民兵組織の集団を非難するか問われた際、極右グループ「プラウド・ボーイズ」は「下がって待機」するようにと語った。

<プラウド・ボーイズとは>

プラウド・ボーイズは前回2016年の米大統領選の際に、カナダ・英国系の極右活動家で米国とカナダのバイス・メディア共同創設者であるギャビン・マクインズ氏が設立した。ただ同氏はその後はプラウド・ボーイズから距離を置いている。

米名誉毀損防止同盟(ADL)(ニューヨーク)によると、プラウド・ボーイズは全米の大半の州と外国の一部に支部がある。メンバーは数百人規模と推定される。2018年終盤のニューヨーク市での左派抗議者との衝突をきっかけにメディアに注目された。米国での最近の反黒人差別を訴える抗議活動で生じる騒乱を巡って、再びスポットライトが当たった。

グループは「現代の世界を作り上げたことへの謝罪」を拒否する「西洋優越主義者」の男性のみが会員だと自称。メンバーの人種はばらついているが、女性蔑視、反イスラム、反移民を主張すると過激主義の監視団体は指摘している。

ADLによると、プラウド・ボーイズのメンバーは白人至上主義を露骨には受け入れないものの、白人優越主義的な思想にこだわる傾向がある。昨年はメンバー2人がニューヨーク市で集会後に反ファシストを叫ぶ抗議者と乱闘を起こし、禁錮4年の有罪になった。

<大統領候補討論会で言及されたのはなぜか>

29日の討論会の司会者クリス・ウォレス氏はトランプ氏に、白人至上主義で民兵組織の集団を非難するか、オレゴン州ポートランドやウィスコンシン州ケノーシャなど全米各地の最近の抗議活動での騒乱から「身を引いて」加わらないよう呼び掛けたいかと尋ねた。

トランプ氏は「もちろんだ」と答えたものの、「一体私に誰を非難してほしいのか」と返答。すかさずバイデン氏が「プラウド・ボーイズだ」と告げた。

これに対するトランプ氏の発言が、プラウド・ボーイズは「下がって待機せよ」だった。もっともトランプ氏はすぐに話題を極左運動「アンティファ」の方に向けた。同氏は最近の抗議活動での騒乱はアンティファのせいだと非難し続けている。

討論会でのこの発言を受け、メッセージングアプリ「テレグラム」上のプラウド・ボーイズのチャンネルでは、自分たちのロゴに「下がって待機せよ」の文言を加えた画像が投稿されたり共有されたりした。

メンバーの1人、ジョー・ギグス氏はソーシャルメディアの「パーラー」で、自分たちが大統領に言及されたことを祝福。「大統領は待機せよとわれわれに伝えた。誰かがアンティファに対処する必要があるからだ。了解、閣下。われわれは準備ができている」と書き込んだ。

トランプ氏は30日、ホワイトハウスで記者団に対し、プラウド・ボーイズについてよく知らないとしつつも、そのグループは米国の法と秩序の執行状況を見守るべきだと述べた。

<最近の抗議活動への関与>

プラウド・ボーイズはここ数カ月、ポートランドなどの都市での「ブラック・ライブズ・マター」運動のデモ隊らと激しく衝突している。メンバーは集会ではしばしば黒と黄色のポロシャツを着用、防護装備をつけ、拳銃やペイントボール銃、野球のバットなどで武装している。

ポートランドでの26日の同グループ集会の前には、ブラウン州知事(民主党)が騒乱で市民の生命が脅かされる危険があるとして緊急事態を宣言した。この集会には何百人ものプラウド・ボーイズ支持者が参加した。

<プラウド・ボーイズはヘイト団体か>

反ヘイト団体の南部貧困法センター(SPLC)は2018年、プラウド・ボーイズをヘイトグループと認定した。プラウド・ボーイズ共同創設者のマクインズ氏はこれに対し19年2月、SPLCが「意図的にうそをつき」、自分の評判を損なおうとしているとして提訴した。裁判は続いている。双方の弁護士はコメント要請に返答していない。

ブラウン知事は30日にツイッターでプラウド・ボーイズを批判した。「はっきりさせておこう。プラウド・ボーイズは白人至上主義者たちだ」。さらに「人種差別とヘイトは愛国心の形ではない」とも投稿した。