[ソウル 10日 ロイター] – 北朝鮮は10日に実施した未明の軍事パレードで、初めて公開する大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を披露した。北朝鮮がこの時間帯に軍事パレードを行うのは異例。
北朝鮮国営ニュースの朝鮮中央通信が10日夜、映像を公開した。
ミサイルは11の車軸を有する運搬車が運んでおり、専門家によると、運用可能になれば陸上発射型のICBMとしては世界最大級の1つとなる。
「このミサイルは怪物だ」と、平和団体オープン・ニュークリア・ネットワークのメリッサ・ハンナム副所長は言う。
パレードではこのほか、北にとって最長射程となる火星15号、さらに潜水艦発射型ミサイル(SLBM)とみられる装備も披露した。
米政府高官は、ICBMが登場したことに「失望」の意を示し、朝鮮半島の完全な非核化を実現するよう、米政府に交渉するよう呼びかけた。
北朝鮮が弾道ミサイルを公開するのは、金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領が2018年6月ににシンガポールで会談して以来初めて。金委員長は「わが国の抑止力と自衛力を強化し続けていく」と語った。一方で、軍事力を先制使用することはないとした。
金氏は経済発展の約束を果たせていない理由として、国際社会による制裁措置、台風、新型コロナウイルスを挙げた。その上で「多くの信頼に応えることができていないのは遺憾だ」とした。「私の努力と献身は、苦しい状況から国民が抜け出すのに十分ではなかった」と述べた。
映像は、深夜に金委員長が姿をみせる様子を伝えた。金氏はグレーのスーツとネクタイ姿。平壌の金日成広場で軍関係者に囲まれながら群衆に手を振り、子供たちから花束を受け取った。
パレードは高度に演出されたもので、数千人規模の軍隊が隊列を組んで行進し、新型の戦車などを披露、戦闘機が照明弾を放った。
専門家は新たに公開されたICBMについて、多弾頭を搭載できる可能性を指摘する。複数の標的を同時に狙えるようになり、迎撃する側にとっては難しさが増す。
米政府で北朝鮮の情報収集をしていたマーカス・ガーラウスカス氏は、新型ミサイルは北の弾頭が米国本土に届くかどうかという疑念を払しょくするために披露された可能性があると指摘。このミサイルを試射する用意があることを示唆したとの見方を示した。
「もし火星15号が『超巨大な弾頭』を運搬できるとしたら、さらに大きなこのミサイルは何を搭載可能なのかという疑問に当然ながら行き着く」と、ガーラウスカス氏は語る。
金委員長は、自然災害と新型コロナに対応する軍に感謝しながら、感情的になる場面があった。金氏は、北朝鮮国内で1人も新型コロナの陽性者が出ていないことに謝辞を表明した。米国も韓国も、誰も感染していないとする北の主張を疑問視している。
この軍事パレードではマスク姿の聴衆は確認されていない。
金氏は、パンデミック(感染症の世界的流行)が終息した暁には韓国と再び手を取り合うことに期待を示した。