[ワシントン/シアトル 18日 ロイター] – 米航空機大手ボーイングBA.Nは18日、2年近くの精査、企業の激動期、世界各地の規制当局との協議の行き詰まりの末、死者が出た2件の墜落事故を起こした737MAX機を再び運航する許可を米連邦航空局(FAA)から得た。
FAAは、ボーイングが737MAXの商業用運航を再開するために必要なソフトウエアの更新や操縦士訓練の変更を説明。737MAXの運航停止期間は20カ月と、商業航空史上最も長かった。
FAAのディクソン長官はロイターに対して「こうした墜落が再び起こらないことを確実にするために可能な限りのことを行った」と語り、機体の安全性に「100%自信を持っている」と強調した。
ボーイングで最も売れている737MAXは、新型コロナウイルス感染の再拡大や欧州の新たな貿易関税、737MAXに対する不信感などの強い逆風に直面する中で運行を再開することになる。
ボーイングのカルホーン最高経営責任者(CEO)は従業員向けメモで「これから引き渡す飛行機の一つ一つが、当社のブランドと信頼を取り戻すための機会になる」と訴えた。文書や声明ではブランド名である「MAX」の名称が消え、代わりに「737─8」や「737─9」が用いられた。
737MAXを保有する米国の航空会社のうち、アメリカン航空AAL.Oは12月29日に運航を再開する予定。ユナイテッド航空UAL.Oは2021年の第1・四半期に、サウスウエスト航空LUV.Nは同第2・四半期に再開する。アラスカ航空ALK.Nは来年初めに最初の機体を受け取り、3月に運航を開始する見込み。
欧州やブラジル、中国の主要な規制当局は、独自の審査の後、各々が許可を出す。世界各国はかつて、何十年にもわたりFAAの基準と足並みを揃えてきたが、737MAXの墜落が、航空安全に関する米国の支配力を台無しにしたことを示す。
このうち、カナダとブラジルは、審査を継続するものの、早期に手続きを完了する見込みとした。中国などでは運航再開のめどは立っていない。
ボーイングとの関係が近過ぎるとの非難に浴びてきたFAAは、運航停止中に製造・保管された約450機の737MAXの耐空性をボーイングが認定することを今後は許可しないと述べた。新たな航空機はFAAが直接検査するという。検査は1年以上かかる可能性があり、航空機の引き渡しが遅れることになる。
また、事故で問題になった機首を自動的に下げる失速防止装置(MCAS)の問題に対処するため、新たな操縦訓練やソフトウエアの更新を義務付ける。
ボーイングはメンテナンスを維持したり、元の購入者からのキャンセルが続いた737MAXの新しい購入者を見つける努力をしている。需要は新型コロナの危機によってさらに低迷している。
こうした障壁がありながらも、737MAXの納入を再開することで、ボーイングのほか、運航停止に関連した減産で財政がひっ迫していた何百もの部品供給業者にとって、非常に重要な資金の流れが再開することとなる。