[ロンドン 24日 ロイター] – 欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会の当局者は24日、英国とEUは通商協定で合意したがEUは依然として、域内の金融市場へのアクセスを英国に認めるかどうかを決めていないと述べた。

24日に合意された画期的な通商協定は、漁業や農業などの産業のためのルールを定めたが、英国のはるかに大きく影響力のある金融部門は対象でない。

英国とEUが通商協定で合意したことで英金融業界のEUへのアクセス拡大の道が開けたとの期待が高まったが、EUはそうした判断を急がない姿勢を示した。

EUはこれまでに、「同等性」として知られる金融市場のアクセスについて、英国がEUの単一市場から離脱する来年1月1日以降に2つの金融活動に関してだけ認めている。

イングランド銀行(英中央銀行)は、これ以上のアクセスが許可されない場合、市場に混乱が生じる可能性があると述べている。

英国とEUが通商協定で合意したことを歓迎したわずか数分後、欧州委は12月31日以降に英国がEUのルールからどのようにかい離するかについて「一連のさらなる明確化」を求めた。「こうした理由から、欧州委は(議論中の)28の分野における英国の同等性評価を完結することができず、現時点では決定を下すことができない。よって、評価を続ける」と当局者は述べた。

EUが英国の金融サービスへの依存度を減らそうとする中、ロンドンの金融ハブである「シティー・オブ・ロンドン(シティー)」は優遇措置を確保しておらず、金融ハブの競合であるニューヨークと同等の扱いを受けることになる。

EUの同当局者によると、今回の通商協定のもとで金融サービスはEUの他の通商協定と同様に扱われる。

英国によると、双方は同等性についてどのように進めていくかを今後議論するが、アクセスの許可には至っていない。

また、双方は21年3月までに金融サービスの規制協力に関する覚書に合意することを目指す。カナダや米国などの国はすでにそのような協力関係を結んでいる。

ジョンソン英首相は「英EUの取り決めには金融サービスの同等性について良い文言が使われている。われわれが望んでいたほどではないかもしれないが、それでも活力あるシティーがかつてないほど繁栄することができる」と語った。

英国は、金融市場へのアクセスに関する事務処理を簡素化し、データ処理の厳しい条件を回避する日本との通商協定をEUと再現することができなかった。

シティーの行政責任者キャサリン・マクギネス氏は「通商協定で合意したことで、独立したパートナーとして、将来の協力的なパートナーシップの基礎を築くことができると期待している」と述べた。

法律事務所CMSのパートナー、サイモン・モリス氏は、英国はまだ金融サービスに関する個別の協定を目指しているのではないかと述べた。

ルクセンブルクの金融業界の発展促進を図る機関、ルクセンブルク・フォー・ファイナンス(LFF)は、通商協定で合意したことによってEUが合意済みのデリバティブ清算のための18カ月間と、アイルランドの証券の決済のための6カ月間を超えて同等性を認めやすくなるだろう述べた。

デリバティブ取引の延長がなければ、来月からニューヨークがロンドンのビジネスに取って代わる見込みだ。

英財務省は、ルールの変更で基準が下がることはないとしている。金融サービスの同等性についてすぐにはコメントしなかった。英国の銀行や取引プラットフォームは顧客への混乱を避けるため、EU内に拠点を開設している。

スタンホープ・キャピタル・グループの創設者兼最高経営責任者(CEO)のダニエル・ピント氏は、「シティーは今、自らの手で未来を切り開く必要がある」と語った。