【ロンドン時事】英国は31日午後11時(日本時間1月1日午前8時)、欧州連合(EU)を完全に離脱する。2020年1月末の離脱から11カ月に及んだ事実上の残留状態が解消され、名実ともに非加盟国となる。EU加盟国の脱退は英国が初めて。16年6月の国民投票で決まった外交・内政の大転換は、4年半の年月を経てようやく実行に移される。
ジョンソン英首相は30日、「EU離脱は終わりではなく始まり。英国の歴史の新たな一章を開く」と表明。今後について「恐れることは何もない」と国民を鼓舞した。
約半世紀かけてEUとの一体化を進めた英国は、完全離脱でEUの高度な自由貿易圏を出る。ただ、EUは英国にとって最大の貿易相手で、活発な交易に支障を来すことから、後継の自由貿易協定(FTA)を締結し、無関税取引を維持することで24日に妥結した。
ジョンソン氏、EUのミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長は30日、FTAに署名。英欧FTAは「貿易連携協定(TCA)」と名付けられた。
TCAは英議会で関連法が30日に可決、成立し、完全離脱に合わせた暫定発効の準備が整った。半面、労働者が自由に往来できる原則で密接に結びついた社会・経済を二つに引きはがす余波は大きく、年明け以降に英EU間の物流などがある程度混乱するのは避けられないとみられている。
英予算責任局によると、離脱後の英国の経済成長は、長期的にみて、EUに残留した場合を4%程度下回る見込み。
しかしジョンソン氏は、加盟国が主権の行使を制限されるEUの仕組みを拒否。「カネ(予算)、国境(移民政策)、法(司法権)、海(漁業権)を取り戻す」と訴えて有権者の不満の受け皿になると、経済合理性より政治信念を優先したプロジェクトを推進した。
英国は1973年、EUの前身・欧州共同体(EC)に加盟した。2016年の国民投票で「EU離脱」が多数となり、曲折の末に離脱が実現。同時に激変緩和の「移行期間」が始まり、加盟国同然の扱いを受けてきた。