バイデン米大統領(78)は就任式を終えた20日夕、ホワイトハウスで17の大統領令などに署名した。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるためのマスク着用義務化や、トランプ前政権が脱退した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰手続きを進め、路線転換を打ち出した。バイデン氏は記者団に「待っている時間はない。直ちに仕事に取りかからないといけない」と話した。
大統領令は、議会の同意なしに大統領としての権限を発動することができる。バイデン氏は新型コロナ対策、経済回復策、地球温暖化・環境、移民・多様性など、政権の重点政策と重なる4分野で大統領令などを準備しており、コロナ対策や環境保護を軽視し、国際協調に背を向けてきたトランプ政権の政策を次々と覆すことが目的だ。米政治専門紙ザ・ヒルによると、今後10日間で計53の大統領令を用意しているという。
20日はコロナ対策で、トランプ氏が始めた世界保健機関(WHO)からの脱退手続きを中止。経済政策では、家賃などの滞納による立ち退きや差し押さえの猶予期間延長や学生ローンの返済の一時停止を命じた。また、移民政策ではイスラム教徒の多い国からの入国規制や、メキシコとの国境の壁建設を取りやめた。
パリ協定はトランプ政権が17年に離脱を表明し、昨年11月に正式に脱退した。復帰手続きには、規定により30日かかる。また、トランプ政権が行った巨大パイプライン建設許可の撤回、環境規制の緩和などの見直しを各省庁に指示した。(ワシントン=香取啓介)