3年前、いわゆる仮想通貨=暗号資産の大手交換会社「コインチェック」から580億円相当の暗号資産が流出した事件で、警視庁がこのうちおよそ200億円分について、不正に流出したと知りながら別の暗号資産との交換に応じたとして、数十人を検挙していたことが捜査関係者への取材で分かりました。一方、流出そのものに関わった人物の特定には至っていないということです。

3年前の2018年1月、暗号資産の大手交換会社「コインチェック」から「NEM」と呼ばれる暗号資産、およそ580億円相当が外部からの不正なアクセスを受けて流出し、その後、匿名性の高い闇サイトで通常より安い価格での交換が呼びかけられました。

犯罪で得た資金を合法的なものに見せかけるマネーロンダリング=資金洗浄が目的だったとみられていますが、警視庁が不正に流出したと知りながら別の暗号資産との交換に応じたとして、これまでに医師や会社役員など数十人を組織犯罪処罰法違反などの疑いで逮捕または書類送検していたことが捜査関係者への取材で分かりました。

合わせておよそ200億円分に上るということで、数十人は交換した「NEM」をそれぞれ国内外の取引所に持ち込み、換金するなどして多額の利益を得た疑いがあるということです。

一方、流出そのものに関わった人物の特定には至っていないということで、警視庁は引き続き、電子計算機使用詐欺などの疑いで捜査することにしています。

事件の経緯は

東京 渋谷区にある大手交換会社「コインチェック」から「NEM」と呼ばれる暗号資産が流出したのは、3年前の2018年1月26日。

警視庁などによりますと、午前0時すぎからのわずか20分ほどの間に、当時、流通していたNEMの5%余りに当たるおよそ580億円相当が流出しました。

流出の3日前から2日前にかけて外部から不正なアクセスがあったことが確認されているということです。

さらに流出の10日余り後には匿名性の高い闇サイト「ダークウェブ」で「NEMを格安で別の暗号資産と交換する」という呼びかけが行われ、交換に応じる動きが相次ぎました。

これを封じ込めようと、シンガポールに本部がある推進団体の「NEM財団」は特殊な技術を使ってインターネット上で追跡を行うとともに、世界各国の大手取引所に対し、流出した暗号資産を犯人に換金させないよう呼びかけました。

しかし、流出したNEMが別の口座に複雑に分散されるなどして歯止めはかからず、NEM財団はおよそ2か月後に追跡を停止。

その後、全額が別の暗号資産に交換されたり、換金されたりしたとみられています。

警視庁は「コインチェック」からサーバーの通信記録の提供を受けて捜査を進めていますが、外部からの不正なアクセスは通信経路をたどれない特殊なソフトが使われたりするケースも多く、3年がたつ今も流出そのものに関わった人物の特定には至っていません。

一方、事件を受けて「コインチェック」は対策を強化し、暗号資産をすべて外部のネットワークから遮断した状態で管理するようにしたほか、セキュリティー対策の専門部署を設け、サイバー攻撃に備えた訓練を定期的に行っているとしています。

また、金融庁もおととし、資金決済法など関連する法律を改正し、外部のネットワークとつながった状態で暗号資産を管理している交換会社については、流出に備えて一定以上の暗号資産を安全に確保しておくよう義務づけるなど利用者保護の強化を図っています。