[ワシントン 27日 ロイター] – バイデン米大統領は27日、気候変動への対応に向けた複数の大統領令に署名した。グリーン政策の推進が経済に恩恵をもたらすと強調し、国有地における新たな石油・ガス鉱区のリース権付与を停止するほか、化石燃料補助金を廃止する。
気候変動対応を米外交と国家安全保障の柱とする大統領令にも署名した。化石燃料を重視し、環境規制を緩和したトランプ前大統領の政策から路線を大きく転換する。
バイデン大統領は「気候を巡る危機に対処するまで時間がかかり過ぎたと感じている」とし、「小規模な措置を実施している時ではない。大胆になる必要がある」と表明した。
さらに「気候変動への答えについて考えるとき、私の頭をよぎるのは雇用だ」とし、最新かつ弾力性のある気候関連インフラの整備やクリーンエネルギー推進によって、高報酬で労組に守られた数百万の雇用創出につながるとの認識を示した。
大統領令の下、国有地・水域での新たな石油・ガス鉱区のリース権付与が停止される間、既存のリースに加え国有地・水域における化石燃料の開発許可に絡む慣行について「厳格な見直し」が実施される。
さらに2030年までに、野生動物の保護に向けた国有地・水域の30%保全や再生可能エネルギー産出量の倍増を目指す。
気候変動担当のケリー大統領特使は、温室効果ガス排出量問題を巡り、米国が中国と連携する見通しとしつつも、この問題を進展させるために他の主要懸案で駆け引きすることはないと言明した。
米エネルギー大手ヘスは、バイデン氏の気候変動対応が雇用やエネルギー安全保障に及ぼす影響に留意すべきとの認識を示した。
また、民主党上院トップのシューマー院内総務は、気候変動に関する国家非常事態を宣言すべきと、バイデン大統領に求めた。
国防総省は同日、軍事演習などに気候変動リスクを考慮すると表明。オースティン国防長官は声明で「国防総省は軍事活動やリスク評価において気候変動を優先的に考慮する適切な政策措置を直ちに講じる」とし、気候変動リスクの分析を軍事演習や新たな国家防衛戦略などに組み込むとした。