[ワシントン 10日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、米雇用市場の回復に向け「官民双方の寄与と共に、社会全体のコミットメントが必要」との見解を示した。
パウエル議長はニューヨーク経済クラブで講演し、「失業者数と、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後の就職難の可能性を踏まえると、最大雇用の実現と維持には緩和的な金融施策以上の取り組みが求められる」と言明した。
さらに「堅調な雇用市場の恩恵を十分に実現するには、短期的な政策と長期的な投資による継続的な支援が必要」とし、「そうすることで職を求めている全ての人が技能と機会を与えられ、繁栄に貢献するとともに、繁栄の恩恵を享受できるようになる」と述べた。
FRBはこれまでも、景気支援に向け借り入れコストを低水準にとどめると確約してきたが、パウエル議長はこの日の講演で、昨年春に始まったパンデミックで引き起こされた雇用危機に一段と包括的な対応が必要と強調。バイデン大統領とイエレン財務長官の路線と歩調を合わせるものだった。
コロナ危機発生後、FRB当局者は連邦債務水準よりも現時点で経済のために行う必要がある対策に注目。パウエル議長もこの日の講演で、第2次世界大戦後の状況に言及し、現時点では誰もが職に就けるような雇用市場にはまだほどお遠いとの認識を示した。
LPLフィナンシャル(ノースカロライナ州)のシニア市場ストラテジスト、ライアン・デトリック氏は「FRBは議会と民間部門に対し雇用引き上げに一段と取り組むよう要請しているようだ」と指摘。パウエル議長の講演に対し、金融市場はほとんど反応を示さなかった。