パナソニックの津賀一宏社長は、開発中の電気自動車(EV)向け新型リチウムイオン電池「4680」について、量産化に成功すれば、米テスラ以外の自動車メーカーにも供給していく意向を示した。来年4月の持ち株会社体制移行後も車載電池事業は収益のけん引役になるとみている。

  津賀氏は8日のインタビューで、4680の最大の魅力は「低コスト」だと説明。既に他の自動車メーカーからの引き合いもあるという。4680は蓄電するセルのまま自動車に組み込むこともでき、セルの大型化で容量と出力も増える。テスラが搭載する場合は工数も少なくなるとみられ、EV生産の低コスト化につながる可能性がある。

Panasonic Crop. President Kazuhiro Tsuga Interview
Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  津賀氏はテスラがドイツのベルリン郊外に建設中のEV生産工場への電池供給の可能性について「規模が大きくなってきたときに場合によれば、あるかもしれない」と言及した。4680はテスラの要請に応じて開発を進めている。

  パナソニックは持ち株会社移行後、テスラ向け電池を含むエナジー事業の強化を成長戦略の一つとする。環境規制の強化に伴う世界的な自動車電動化の加速で電池需要が拡大する中、EVで世界覇権を目指すテスラにとどまらず、あらゆる自動車メーカーの需要を取り込みたい考えだ。

  津賀氏はテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)について、優秀な人間を集める力やカリスマ性があると評価した。その上で、「EVの競争がさらに激しくなってきたときにずっと安泰でいられるのか、それは分からない」と話した。

  パナソニックは来年4月に持ち株会社体制に移行する計画。車載事業担当の楠見雄規常務が今年4月にCEO、6月の株主総会後に社長に就任し、新体制のかじ取りも担う。

  津賀氏は長期的な成長のために、持ち株会社への移行を決断したとし、「これからの成長の中で弱いところ、欠けている部分」に投資していく方針を示した。同社の昨年12月末時点のフリーキャッシュフローは3119億円で、現預金は1兆3589億円ある。

  津賀氏は車載電池のほか、IT関連や空調事業にも投資していく意向。空調事業ではウイルスの抑制や除菌・脱臭に効果のある独自技術と業務用空調を組み合わせることで「世界的に伸ばせる余地がある」とみている。同社は昨年11月、ノルウェーのエネルギー関連企業と提携するなど欧州事業の拡大も進める。  

  日本経済新聞は8日、サプライチェーン(供給網)の効率化を手がける米ソフトウエア大手、米ブルーヨンダーを7000億円を軸に買収する方針を固めたと報じた。家電やソフトを組み合わせて継続的に収入を得るビジネスモデルの構築なども狙うという。

  津賀氏は2012年の社長就任以降、プラズマテレビや液晶パネル、半導体など赤字事業から撤退し、企業向け事業を強化するなど構造改革を進めた。6月に代表権のない会長に就く。

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