中国の習近平指導部が香港の選挙制度の変更を決め、民主派の排除が進む見通しとなったことについて、香港政府トップの林鄭月娥行政長官は「統治の効率が高まる」と歓迎したのに対し、香港市民からは批判や落胆の声が聞かれました。

中国の習近平指導部は香港の選挙制度について「明らかな欠陥があり、愛国者による香港の統治のため変更が必要だ」として、11日閉幕した全人代=全国人民代表大会で制度を変更すると決めました。

新たな制度では香港政府トップの行政長官を選ぶ「選挙委員会」の権限を拡大し、議会にあたる立法会の議員の一部も選ぶようにするほか、立候補する人を事前に審査する「資格審査委員会」を設け、中国や香港政府に批判的な民主派の候補者の排除が進められる見通しです。

これについて林鄭月娥行政長官は11日夜、記者会見し「香港政府の統治の効率が高まる」と述べて歓迎しました。

これに対し香港市民からは批判や落胆の声が聞かれました。

このうち30代の男性は「投票の意味がなくなった。誰が立候補できるかも勝手に決められ、選択の余地がない」と諦めの表情で話していました。

また30代の女性は「香港の民意を反映していないことが問題で、中国は制度を好きなように変えてしまっている。大きな損害だ」と怒りをあらわにしていました。

英ラーブ外相が非難「中国への信頼を損ねるだけ」

イギリスのラーブ外相は、中国の習近平指導部が香港の選挙制度の変更を決めたことを受けて、11日、声明を発表し「香港における民主的な議論の余地をなくすものだ」などと強く非難しました。

そして「国際的な責任や法的な義務を果たすという点で、中国への信頼を損ねるだけだ」と強調しました。

米プライス報道官「香港の自治や自由 直接攻撃」

アメリカのプライス報道官は11日の記者会見で、中国の習近平指導部が香港の選挙制度の変更を決めたことについて「香港の自治や自由、民主的なプロセスを直接攻撃するものであり、民主派の議員を減らし、政治的な議論を押さえつけるものだ」と強く非難しました。

そのうえで、来週18日に行われる米中の外交当局のトップによる会談に触れ「中国の言動が、アメリカだけでなく同盟国や友好国の安全保障や繁栄、価値観をいかに脅かしているのかを率直に伝える。難しい話し合いになるだろう」と述べ、会談でブリンケン国務長官が香港の問題について直接懸念を伝えるという見通しを示しました。