液状のワクチンを凍結、乾燥させて粉末状にする新たな装置を開発した日本国内の企業が、新型コロナウイルスワクチンでの実用化に向けて国内外の複数の製薬会社と調整に入った。早ければ来夏にも実用化できる見通し。粉末化によりワクチンは小型・軽量化し、常温での輸送や長期保管も可能となり、安定供給も見込めるため世界から注目されている。

 日本で接種が行われている米製薬大手ファイザーのワクチンは当初、零下75度の超低温管理が大きな課題になった。その後、零下20度前後で最長14日保存できるようになるなど条件が緩和されたが、低温管理が必要なことに変わりはない。

 モリモト医薬(大阪市)は管理しやすい粉末ワクチン用の新装置を開発し、昨年10月に特許を取得。液剤をノズルから噴霧して真空凍結機でパウダー状に凍結。その後、真空の横型ドラムの中を移動し乾燥させることで、高品質な粉末製剤を大量生産できる。粉末ワクチンは、生理食塩水に溶かせば液体に戻る。

 海外の医薬品メーカーも粉末化の開発を急ぐが、従来法は装置内に瓶入り液剤を並べて乾燥させる仕組み。新装置は従来法と同じ設置面積なら生産能力が10倍となる。年間数億回投与分の生産が可能になり、コストも削減できるという。

 今年に入ってモリモト医薬は、既にワクチンを開発した海外の製薬会社や開発中の国内メーカーと新型コロナワクチンでの実用化に向けて調整。厚生労働省のワクチン承認の状況にもよるが、粉末ワクチンが安定供給できる自社の生産ラインも来夏の稼働を目指して準備を進めている。

 モリモト医薬の盛本修司社長は、国内でのワクチン開発が遅れている現状を踏まえ「日本発の技術で供給に貢献できれば」と話している。