【北京=比嘉清太】中国の温家宝前首相(78)が、マカオ紙への寄稿で「中国は『公平と正義に満ちた国』であるべきだ」と主張し、波紋を呼んでいる。ネット上では、国内の統制を強める習近平政権を批判する意図があるのではないかとの見方が流れている。中国のSNSでは、温氏の寄稿の転送が制限された。
胡錦濤前政権で首相を務めた温氏は、政治改革推進を訴えた改革派指導者として知られる。寄稿は「私の母親」と題して亡母への追憶を記したもので、3月下旬以降、4回にわたり週刊紙「マカオ導報」に掲載された。
注目を集めたのは、温氏が最終回で「侮辱や抑圧に反対する」と強調したことだ。「永遠に人の心や人道、人の本質が尊重され、永遠に青春や自由の気概があるべきだ」との記述もあった。
寄稿によれば、教師だった父親は、1966~76年の大衆政治運動「文化大革命」に際して迫害され、視界が遮られるほど顔を殴られたという。習政権下では、中学校で使われる歴史の教科書で文革の章が削除されており、文革への批判のトーンが弱まったと指摘されている。