【ソウル聯合ニュース】韓国のソウル中央地裁は21日、旧日本軍の慰安婦被害者や遺族20人が日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、原告の訴えを却下した。同地裁は1月に日本政府に対し12人の原告に1人当たり1億ウォン(約970万円)の賠償支払いを命じたが、異なる判断を出した。

 却下は訴訟要件を満たしていない場合、審理を行わず下す決定だ。

 今回地裁は日本政府が主張する主権免除を適用する必要があると判断した。主権免除とは主権国家が他国の裁判管轄権から免除されることを意味する。

 地裁は第2次世界大戦後、欧州の被害者らがドイツを相手取り訴訟を起こしたものの主権免除を理由に却下された事例などを取り上げ、「国家免除(主権免除)の例外を認めると、宣告と強制執行の過程で外交的衝突が不可避だ」と説明した。

 2015年の韓国と日本の慰安婦合意に関しては、「外交的な要件を備えており、権利救済の性格を持っている」として、「被害者の意見を集めないなど内容と手続きに問題があったが、このような事情だけで裁量権を乱用したとは見なし難い」と指摘。「合意には相手があるため、韓国の立場だけを一方的に反映できない」とし、「合意案は被害者の同意を得ていないが、被害者の意見を集める手続きは経ており、一部の被害者は(合意に基づき日本の拠出金で設立された)『和解・癒やし財団』から現金を受け取った」と述べた。

 また、「被害者が多大な苦痛を経験し、韓国が傾けた努力と成果が被害者の苦痛と被害を回復するには不十分だったとみられる」としながら、「被害回復など慰安婦被害者の問題解決は外交的な交渉を含む努力によって行われなければならない」と強調した。

 同地裁は1月の同種の訴訟では日本政府に対し賠償支払いを命じた。当時の判決では「日本の不法行為に国家免除は適用できない」として裁判管轄権を認めた。日本は対応せず、判決が確定した。