[ワシントン 7日 ロイター] – 米労働省が7日発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比26万6000人増と、市場予想の97万8000人増を大幅に下回る伸びとなった。労働力不足が要因となった可能性がある。政府からの大規模な支援を背景に米経済が再開される中、企業は旺盛な需要への対応に追われている。
3月の雇用者数は77万人増で、当初の91万6000人増から下方修正された。新型コロナウイルス流行前の昨年2月に付けたピークからはなお820万人の雇用が失われている。
4月の失業率は6.1%と、3月の6.0%から上昇した。コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いがかく乱要因となっている。
全米クレジットユニオン協会のチーフエコノミスト、カート・ロング氏は、今回の統計について「失業手当の拡充が労働力の供給を制限している」と分析。大統領経済諮問委員会(CEA)のジャレッド・バーンスタイン委員は景気回復の道のりがいかに長く険しいかを物語るもので、経済対策による下支えが必要だと強調した。
バイデン大統領は雇用統計を受け、経済が正しい方向に向かってはいるものの、回復への道のりは長いと表明。同時に、景気が過熱するリスクは見当たらないという考えを示した。
また、CEAのヘザー・ボウシー委員は、コロナ禍を理由に職探しをあきらめる人は減るなど、明るさも見受けられると指摘した。
16歳以上の国民がコロナワクチン接種を受ける資格を得たことで、ニューヨーク州やニュージャージー州、コネティカット州などで店舗の収容人数制限の大半が解除される中、消費者の需要は高まる一方、労働力や原材料の不足といった問題も発生。製造業から飲食業に至るまで、雇用主は労働者の確保に奔走している。
人手不足の理由としては、手厚い失業手当に加え、親が育児のために在宅を強いられていることやコロナ禍をきっかけとした退職、原材料不足などさまざまな要因が挙げられる。失業手当の支給が終了する9月までは緩やかな雇用ペースが続くという見方もある。
イエレン財務長官は「労働力に復帰する準備や能力のない人々がいることは明らかで、失業保険手当の拡充が実質的な変化をもたらしているとは考えにくい」という考えを示した。
ロヨラ・メリーマウント大学の金融・経済学教授であるソンウォン・ソン氏は「政府による寛大な支援により雇用の伸びが見劣りしている」と指摘。「人手不足のレストランのオーナーは残業をしているし、トラックの運転手は時給を大幅に上げても見つからず、倉庫の積み降ろし場では労働者が足りずにトラックが空転している」と述べた。
こうした中、調整前の雇用者数は3月の117万6000人の増加に続き、4月も108万9000人の増加となった。インサイト・インベストメントのポートフォリオマネジャー、スコット・ルースターホルツ氏は、「昨年春のコロナショックが季節調整済みのデータに影響を及ぼし、大きな変動をもたらすとこれまでも注意を促してきた。今回の統計でもそうした動きが認められる」と話した。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズのチーフエコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「雇用の伸びを抑えているのは需要ではなく供給であり、経済は順調に前進している点に注目すべきだ」と語った。
雇用の内訳は、レジャー・接客が33万1000人増加し、そのうちレストランやバーが半分以上を占めた。一方、人材派遣は11万1000人減少。製造業も1万8000人減った。世界的な半導体の供給不足により、自動車メーカーが減産を余儀なくされた。運輸・倉庫では、宅配・メッセンジャーが7万7000人落ち込んだ。小売りは1万5300人減少した。
労働者が不足する中、雇用主は賃金を引き上げ、従業員の労働時間は拡大した。時間当たり賃金は0.7%上昇。3月は0.1%低下していた。平均週間労働時間は0.1時間増の35時間となった。
現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は、3月の10.7%から10.4%に改善した。
生産活動に従事し得る年齢の人口に占める働く意志を表明している人の割合、いわゆる労働参加率は61.7%と、3月の61.5%から上昇。人口に占める雇用者数の比率も57.9%と、3月の57.8%からわずかながら伸びた。27週以上失業している人は約418万3000人と、全体の失業者である980万人のうち4割強を占めた。