緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の期限が今月末まで延長された。各種対策があまり効果を発揮していない中で、切り札はやっぱりワクチン接種。菅首相は「1日100万回を目標」に「私自身が先頭に立って加速化を実行に移す」と並々ならぬ決意を公にしている。今月11日までと短期決戦で臨んだ宣言の発動も首相の思い通りにはいかず、大方の予想通りに延長にもつれ込んでしまった。100万回と言われても、「また大風呂敷か、無理なんじゃないの…」、なんとなくそんな気がしてしまう。東京と大阪では防衛省が巨大施設を使って集団接種に乗り出すという。会場やワクチンを押さえても、接種を担当する肝心の医師や看護師は集まるのだろうか、素人ながら余分なことが気になる。そんな中で今朝の日経web版に「へぇー」って思えるような記事が掲載されていた。

タイトルは「『1日100万回接種』開業医の壁、医師会『診療に影響』」。記事は「新型コロナウイルスのワクチン接種で、集団接種では開業医の協力が十分に得られていない。地元医師会が『通常診療に影響が出る』として後ろ向きだからだ」との書き出しで始まる。菅首相は「1日100万回接種」の目標を公にする前に日本医師会や看護師会の会長と面談し、スムーズなワクチン接種への協力を要請、日本医師会の中川会長は「全面的に協力する」と約束した。ところがだ、記事によると「信越地方のある村長は、集団接種を地元医師会に相談したが、十分な協力を得られなかった」とこぼしているという。理由は通常の診察に影響が出るからということのようだ。仕方なくこの村長は、自らの人脈で都市部の医師を確保して集団接種にこぎつけたとある。首相に会長、地元医師会、どこかチグハグである。

同じ記事に接種を担当する医師の日当が記されている。通常は1日あたり一人10万円だが、現在は12万円から13万円に跳ね上がっているという。これを見た時「高〜い」と驚いてしまった。しかも医師を派遣する紹介業者によると、延べ5000人の医師を募集したところ、「勤務医でほぼ確保できる見通し」というからさらに驚く。コロナ禍で医療逼迫といえば、疑う余地のない言葉だ。その裏には医師や看護師の昼夜を問わない過重労働が存在している。そうした状況もあるのだろうが、それでも5000人の募集が難なく消化できる勤務医の勤務実態って「どうなっているの?」、専門家に聞いてみたくなる。欧米では研修を受ければ素人でも接種が可能になる制度があるようだ。1日10万円なら誰もが研修を受けるのではないか。100万回を公言する菅首相の強気の理由が分かったような気がした。同時に、コロナ対策、何もかも噛み合っていないように見えてくる。