【ベルリン時事】9月に総選挙を控えるドイツで、環境政党の野党・緑の党が勢いを増している。メルケル首相の与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と支持率で競り合い、緑の党として初の首相ポスト獲得も視野に入る。背景には、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが火を付けた環境意識の高まりと、既存政治への不信が相まったうねりがある。

首相候補に40歳女性 「メルケル後」刷新目指す―ドイツ野党・緑の党

 「首相の在り方について明確な考えがある」。緑の党のベーアボック共同党首は同党の「首相候補」に選ばれた4月、こう強調した。伝統的二大政党のCDU・CSUと社民党は従来、勝利後に首相に就く人材として首相候補を選び、選挙戦の顔としてきた。緑の党も今回初めて、首相候補を選出。本気で政権奪取に挑む姿勢を明確にした。各種世論調査での支持率は25%前後で、CDU・CSUを上回るものもある。緑の党の連立政権入りと首相誕生は、十分あり得る状況だ。

 緑の党の得票率は、2017年9月の前回総選挙では約9%にすぎなかったが、その後各地方選などで躍進。これは、グレタさんが18年、スウェーデン議会前で環境対策を訴えるデモを始め、ドイツをはじめ欧州で学生を中心に抗議運動が広がっていった時期と重なる。ベルリン自由大学のファース教授(政治学)は「デモは気候保護への関心を大きく高めた」と、党勢拡大への貢献を指摘する。

 ベーアボック氏は40歳の女性。CDU・CSUと社民党の首相候補がいずれも60代男性であるのと対照的に、若い世代への求心力は強い。ただ、党を支持するのは環境政策重視の若い世代だけではない。約20年間緑の党を支持してきたベルリン在住のジャーナリスト、アンドレアス・ガンドウ氏(70)は「私にとっては、環境政策の優先順位はそこまで高くない。政治家の誠実さが重要だ」と話す。既存政治への不信が強い層にも支持は広がっている。

 メルケル氏は総選挙に出馬せず、4期16年で引退する方針。今回の選挙は、ドイツ政治の大きな転換点となる可能性を秘めている。