[ワシントン 4日 ロイター] – 米労働省が4日発表した5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比55万9000人増と、市場予想の65万人に届かなかったものの、底堅い伸びを示した。新型コロナウイルスワクチン接種の広がりにより再度職に就く人が増加し、景気回復が順調に進んでいることがうかがえる一方、労働力不足への不安はなお根強い。
4月の雇用者数は27万8000人増で、当初の26万6000人から小幅ながら上方修正された。
業種別では、レジャーの伸びが目立ち29万2000人増加。飲食も18万6000人増えた。製造業は2万3000人伸びる一方、建設は2万人減少した。政府関連は6万7000人増加した。
FHNフィナンシャルのチーフエコノミスト、クリス・ロウ氏は「依然として大勢の人が失業しているにもかかわらず、働く意欲はあまり感じられない。雇用主がもっと多くの人を見つけていれば、さらに雇用が増えていたはずだ」と指摘した。
バイデン大統領は「雇用統計から国民や経済にとって歴史的な進展が見られる。米国は再び動き出した」とツイッターに投稿。また、ウォルシュ労働長官は「良好で堅実」な統計内容と評価した上で、ワクチン接種の拡大でコロナ感染が弱まっていることから、今後数カ月間でより多くの人が復職すると予想した。職場復帰の足かせともいわれる週300ドルの失業給付加算については、9月以降も延長する必要があるかどうかを判断するのは時期尚早だとした。
失業給付加算を巡っては全米の約半数の州で今月中に終了するほか、残りの州でも9月中には終了する見通し。
今回の統計を受け、雇用者数はコロナ前の2020年2月に付けたピークとの差が約760万人になった。5月時点で正式に失業者と認定された人は約930万人。これに対し求人件数は810万件と記録的な水準に達している。
大半の学校が完全な対面授業への移行を見合わせる中、女性中心に数百万人の労働者が自宅待機の状態にある。ワクチン接種が広く普及する一方で、国民の中には接種に消極的な人もおり、復職のさまたげになっているとされる。
時間当たり平均賃金の伸びは前月比で0.5%。前月は0.7%だった。前年同月比の伸びは2.0%と前月の0.4%から急拡大。レジャー・接客の伸びは1.3%と、3カ月連続で1%を超えた。飲食・接客業界向けの全米求人情報サイトPoachedjobs.comによると、主任待遇の調理師に支払われる報酬は時給最大30─35ドルとなっている。
賃金が持続的に上昇した場合、インフレ率はパウエル連邦準備理事会(FRB)議長が想定するような一過性の動きにとどまらず、高進が長引く可能性もある。しかし、エコノミストの間では、FRBが今回の統計を受け政策変更に向けた討議を加速させるとは考えにくく、早急の量的緩和縮小(テーパリング)はあり得ないとの見方が大勢だ。
失業率は6.1%から5.8%に改善。コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いがかく乱要因となっており、こうした要因を除いた場合、失業率は6.1%にとどまった。
生産活動に従事し得る年齢の人口に占める働く意志を表明している人の割合、いわゆる労働参加率は61.6%と、前月の61.7%からやや低下した。
アリアンツ・インベストメント・マネジメント社のシニア・インベストメント・ストラテジスト、チャーリー・リプリー氏は、「雇用主にとって記録的な数の求人を埋めるには、労働者により多くのインセンティブを提供するしかない」と話した。