[22日 ロイター] – 米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は22日、年末もしくは来年初めにも連邦準備理事会(FRB)はテーパリング(量的緩和の縮小)を開始する準備が整う可能性があるという考えを示した。

記者団に対し「私は景気回復に強気だ」とした上で、テーパリングの条件となる、最大雇用と物価安定目標への「さらなる実質的な進展」は「われわれの目が届く範囲にあり、今年の終わりから来年の初めのある時期にそこに到達することも可能だと思う」と表明した。

さらに「まだそこまでは至っていなくても、基準に達したときのために準備を始めることが適切」と指摘。住宅市場が過熱しているため、住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れを国債より早く縮小すべきかが議論のテーマになるとし、あらゆる決定は米連邦公開市場委員会(FOMC)に任されているが、住宅ローン市場は十分機能しており、MBS買い入れは住宅ローン金利に直接影響しておらず、むしろ国債買い入れとともに金融情勢全体に影響を及ぼしているとの見解を示した。

また、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が少なくとも米国内では収束しつつあり、経済はFRBの全面的な支援を必要としない時期に近づいているものの、これにより、労働市場が強化されていてもインフレが過熱しない限り、FRBは金融政策の引き締めを行わないと確約した新たな枠組みが撤回されるわけではないとした。

デイリー総裁需要の回復と供給上の制約が価格を押し上げることでインフレ率が3%を超える可能性があるとした上で、FRBは労働市場やインフレ率に関する今後数カ月間の「不安定」なデータに反応せず、金融政策に関して「堅実」な姿勢を維持する必要があるとし、学校閉鎖やウイルスを巡る懸念、失業保険など労働力の供給を制限している多くの要因が解消されることにより、「今秋には経済の先行きがより明確になると期待している」と語った。

気候変動については、世界経済と金融システムに「重大なリスク」をもたらしており、米国の広範な地域が混乱する可能性があると述べた。

ピーターソン国際経済研究所で行われたオンラインイベントで、経済に気候変動を考慮した場合、人々の仕事の仕方や栽培可能な作物、物的な損害、設備投資などあらゆる面でコミュニティー全体に不均一な影響が生じる恐れがあると指摘。金融政策担当者としてのわれわれの業務は、この不確実性を乗り越えることだ。気候変動の深刻さや規模、最も影響を受ける人や地域、リスク対応の性質・程度・期間などは実際には誰にも分からない」とした。

また、気候変動は雇用と物価の両方に直接的に影響を与える可能性があり、気候変動の影響を理解することは結果的に米連邦準備理事会(FRB)の正当な権限だと主張。気候変動は貯蓄率、労働生産性、設備投資にまで影響を及ぼしかねず、長期的な中立金利を押し下げる可能性もあり、そうなればFRBは従来の金融政策で将来の景気後退に立ち向かう余地が乏しくなるとした。

FRBが政策の方向性を逸脱しているとの批判に対しては、そうは思わないと否定。FRBは他の中銀とは異なり、環境に優しいエネルギーへの国家的な移行を促進する責務を負っているわけではないが、このような移行が銀行や銀行のバランスシート、さらに経済全体に影響が及ぶ場合には対応する必要があると言及。FRBは経済、金融システム、決済システムという「非常に狭い範囲」で権限を付託されているが、気候変動はこれら3つの分野全てに影響を与えるとした。