[ロサンゼルス/ロンドン 29日 ロイター] – ウォルマートやターゲット、アマゾン・ドット・コムといった主要小売り企業と取引しているサプライヤーはロイターに、今年はクリスマス用商品の発注を例年より何週間も前倒ししていると語った。世界的な物流網の混乱で、肝心の年末商戦本番までに納入できない品が多くなる恐れがあるためだ。 

ロイターは、玩具からコンピューター周辺機器まであらゆる製品を扱う欧米のサプライヤーと小売業者の10社余りを取材。世界的なコンテナ不足や、最近の新型コロナウイルス感染拡大の影響によって世界有数の貿易港である中国南部の塩田港が一時閉鎖されて輸送が滞っていることから、全社がクリスマス向け出荷用在庫の積み上げには遅れが生じると予想している。

小売業者にとっては、せっかく消費者が財布のひもを緩めて積極的に買い物をしようとしている矢先に、店頭の品切れが相次ぐ事態になりかねない。

ロサンゼルスを拠点に、ぬいぐるみの「LOLサプライズ」や人形の「ブラッツ」などの玩具をアマゾン、ウォルマート、ターゲット向けに販売しているMGAエンターテインメントのアイザック・ラリアン最高経営責任者(CEO)は「とてつもない混乱が起きるだろう」と戦々恐々の様子だ。同社の商品は塩田港にある何百個ものコンテナにとどまったままで、顧客に十分な在庫を提供できなければ「年末商戦に打撃を与えてしまう」と懸念する。

塩田港はアマゾンにとっても中国からの出荷量が最も多い場所で、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス傘下のパンジバによると、3-5月の出荷取り扱い全体の32.4%を占める。

ただ同港は24日に再開された後も、コンテナ不足のせいで全面的に稼働していない世界的に貨物船は予約超過状態となり、コンテナが本来あるべきでない地点に残され、各国の港には商品が滞留している。

このままでは、多くの商品で配送が間に合わず、「シッパゲドン(shipageddon)」と呼ばれたほど混乱が生じた昨年の年末商戦よりも物流の渋滞がもっとひどくなりそうだ。

<在庫確保に躍起>

ミシガン州立大学エリ・ブロード・カレッジ・オブ・ビジネスのジェーソン・ミラー准教授(サプライチェーン管理)は、小売業者は全般的に商品を仕入れたそばから販売しているのが現状で、売れ行きが非常に高水準なので在庫を大幅に増やすことができないと指摘。情勢に変化がなければ、自動車関連を除く小売業者が2019年の年末商戦前と同じ在庫・売上高比率を達成するには今後約651億ドル(約7兆1500億円)相当もの在庫を積み増す必要があるとの見方を示した。

英ディスカウント小売店ポンドランドを所有するペプコ・グループのアンディ・ボンドCEOはロイターに「われわれが直面しているのは1日単位の試練であり、頭痛の種であるのは間違いない」とこぼした。

「トミーヒルフィガー」、「カルバンクライン」といったブランドを展開するPVHなどの衣料品小売り企業は、在庫拡充のために航空貨物の利用も選択肢として検討している。

豪華なクリスマスツリーなど装飾品を販売するバルサム・ヒルのマック・ハーマンCEOは、年末商戦関連の在庫は感謝祭の週末にも手に入るかどうか不確実だとした上で、中国発注分の一部はクリスマスにも到着しないかもしれないと悲観的。「この時期に手元にあるはずの商品はまだコンテナ数百個の中だ」と語り、足元の在庫は少なくとも例年より10%少ないと付け加えた。

英国全土にケータリング設備を供給するイージー・エクイップメントのマイケル・シャーCEOも、中国で貨物が足止めされている状況に苦戦を強いられ、前倒しの仕入れに躍起となっている。

ロサンゼルスを拠点にゲームを制作しているエクスプローディング・キトゥンズのカーリー・マクギネス製品・セールス物流担当責任者は、ウォルマートやターゲットなどの主要小売店でゲームが品切れにならない態勢を確保したい考え。今年は制作数を増やしているほか、昨年よりおよそ4カ月早い3月の時点で年末商戦向けの出荷を始めた。

マクギネス氏によると、ウォルマートとターゲットには発注分の一部を「逆輸入」で手当てするオプションも提供している。両社は米国でも屈指の大口コンテナ輸入者なので、貨物船やコンテナを優先的に利用できる可能性があるためだ。

一方、米首都ワシントンのプラガブル・テクノロジーズ創業者バーニー・トンプソン氏は、アマゾンなどに販売しているドッキングステーションをはじめとするコンピューター周辺機器の在庫を年末商戦に向けて復元する望みを捨て去った。売れ行きトップの幾つかの商品は、半導体不足が響いて仕入れまでに12カ月以上もかかってもおかしくないからだ。

トンプソン氏は「クリスマスにはもう手遅れだ」と肩をすくめた。

(Lisa Baertlein記者、Jonathan Saul記者)