【東京2020オリンピック】卓球女子団体決勝(5日、東京体育館)は日本が中国に0-3で敗れた。3大会連続メダルで、銀は2012年ロンドン五輪以来。成長と強化の成果を見せて中国を本気にさせるとともに、王国との明白な差も再認識した2時間は、価値ある挑戦だった。

◇中国ベンチに緊張感

 石川佳純(全農)平野美宇(日本生命)のダブルスが陳夢、王曼イク(日の下に立)のペアを本気にさせた。第1ゲーム、ストップなどの台上プレーから石川がフォアを振る。中国がカウンターなどで返してきても、平野が押されずに返す。

 大会前「ラリーが続いても自分のタイミングで返せるようになった」と話していた平野の成長。バックでは難しいストレートのコースも果敢に突く。11-9で先取した。

 ここから石川が左右に振られるなどして3ゲームを連取され、試合には敗れたが、陳夢の表情が硬く、ヤマ場で中国ベンチが立ってガッツポーズをする場面もあった。第4ゲーム7-4ではタイムアウトを取っている。1試合に1回だけのタイムアウトを早めに使ったあたり、日本への警戒感がうかがえた。

 2番のシングルスは20歳のエース同士、伊藤美誠(スターツ)と孫穎莎。シングルス準決勝でストレート負けしている伊藤は、この日も2ゲームを先取されたが、第3ゲームは同じコースを続けず、左右、長短と先に相手を動かして奪った。第4ゲームの出だしで主導権を握れず敗れたのが惜しまれる。

 3番のシングルスは平野が王曼イクにストレート負け。一矢報いることはできなかったが、かつて1ゲームも奪えない大会が続いた中国戦が、この日は1時間59分に及び、何度も激しい高速ラリーが見られた。

 日本の選手たちは、「ラリー力」を課題の一つに挙げてきた。高速で長いラリーが続くようになり、鋭いコースを突くカウンターも使える。それがこの日のダブルスの善戦にも表れた。

◇先に崩れるのは日本

 だが、まだ届かない差も明らかだった。ダブルスの日本ペアは左と右、中国は右と右で、動きやすいのは日本ペアの方だが、ラリーが続くにつれて2人が離れ、体勢も崩れていくのは日本ペア。中国ペアは2人が割れず、体の芯がぶれずに次の打球に備えていた。

 各選手の技術課題に応じた緻密なフィジカルトレーニングと、下半身の力をラケットに伝える高速の体重移動。その土台があるため、日本の「ラリー力」向上に一瞬は戸惑っても、1本多く返すのが中国で先にミスをするのが日本、という展開になっていく。

 さらに孫穎莎や王曼イクは、フォアへ飛びつく時も肘から先を速く振り、手打ちのようなフォームで強い打球を返す。速いテンポで強いドライブ。一世代上の先輩たちとは違う打法を身に着けている。

 石川は「悔しさは大きいですが、中国の強さも感じました。この舞台で、決勝で戦えたことは、やはりうれしかったですし、たくさんのサポートに感謝したいです」と話した。

 五輪では3大会連続メダル。世界選手権を含め、いつもアジア勢やドイツが関門になり、激戦を乗り越えて中国戦にたどり着いても、簡単にはね返されることが多かった。今回は準決勝まで危なげなく勝ち抜き、中国にもラリーを挑めたところに、強化の跡がうかがえる。それだけに、若い世代が中国との「体」の差を縮めない限り、技術だけでは追いつけないことも明確にしてくれた決勝だった。(時事通信社 若林哲治)。