愛称の「アカツキファイブ」は夜明けを示す「暁」に由来する。東京五輪のバスケットボール女子で日本代表は6日、日の出の勢いで初めて進んだ準決勝で2012年ロンドン五輪銀メダルのフランスを破り、7連覇を狙う米国との決勝に進んだ。「言葉にならないくらいうれしい。12人全員が役割を果たせた」。主将の高田真希は声を弾ませた。過去最高の8強だった前回リオデジャネイロ五輪から5年。階段を駆け上がっている。
12人の中に、エースの名前はない。力強さとスピードを兼ね備えた193センチの渡嘉敷来夢、30歳。史上最年少の16歳で日本代表候補入りし、米国のプロリーグWNBAでのプレーも経験した。昨年12月、試合中に右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂し、五輪を目指してリハビリを続けていた5月末に出場を断念して代表候補合宿を離れた。
大黒柱不在の窮地に、米国出身のトム・ホーバス監督は腹をくくった。「バックアップに保険をかけるより、どうやってスコアできるか」。ゴール下で世界と渡り合える選手は限られている。だったら別の武器を使えばいい-。小柄でも3点シュートが得意な選手たちを選んだ。
身長が低い日本が勝つための戦略として、以前から3点シュートを重視してきた。五輪の舞台では、外れるリスクを承知で、選手たちが果敢に外から狙う姿勢が奏功している。
ナイジェリアとの1次リーグ最終戦では、林咲希が7本の3点シュートを決めた。ベルギーとの準々決勝では、林が徹底マークされる中で宮沢夕貴が7本を決め、83-85で迎えた残り16秒で林が逆転の3点シュートを射抜いた。米国との決勝に向け「やるべきことを徹底する」と高田。決勝はエース不在で勝ち進んだチームの総決算の場だ。(奥村信哉)