• 鉄鋼生産は7月に1年3カ月ぶりの低水準に落ち込んだ
  • 市場は不動産業界の下振れ圧力を若干過小評価-野村の陸挺氏

中国政府が進める鉄鋼から教育、不動産に至る多くの業界に対する締め付けは、金融市場を混乱させ、国内経済の成長見通しを鈍らせている。

  政府は今後数年にわたり企業に対する規制を強化すると示唆しているものの、新型コロナウイルスの新たな流行で予想以上に進んでいる景気減速に対して、規制のペースと強度を当局が注意深く管理する必要があるとエコノミストは指摘する。

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カーボンニュートラル

  中国は二酸化炭素の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを2060年までに達成するという野心的な目標を設定している。そのため政府は鉄鋼生産の削減を表明。共産党政治局は目標達成を狙った極端な措置に警告しているものの、鉄鋼生産は7月に1年3カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。石炭生産も少なくとも4カ月ぶりの低水準となっている。

  

不動産規制

  中国は住宅ローン金利の引き上げや一部大都市での土地入札の一時停止、プライベートエクイティー(未公開株、PE)ファンドによる住宅用不動産開発向けの資金集め禁止などを通じ、価格が高騰した不動産市場への規制を強めている。「住宅は投機ではなく、住むために建てられる」と政策当局は強調する。

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  中国房産信息集団(CRIC)によれば、こうした規制はすでに住宅販売に打撃を与えており、国内の1級都市では2カ月連続で住宅販売が減少した。

  

  野村ホールディングスは国内総生産(GDP)成長鈍化の半分以上は不動産規制によるものだとみており、GDP成長率は1-6月の12.7%から7-12月には4.7%に落ち込むと想定。不動産市場規制は住宅販売減少と投資削減を招くだけでなく、建材や家具、家電の生産・販売と住宅ローン向け金融事業に影響が及ぶ。

  野村の中国担当チーフエコノミスト、陸挺氏は「不動産業界の下振れ圧力を市場は若干過小評価している」と分析。「今後6カ月から1年間に投資と建設は伸びが鈍化するか、縮小の可能性もあり、関連業界や地方政府の収入に比較的大きなインパクトを与える」と予想した。

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教育産業

  中国は1000億ドル(約11兆円)規模に上る教育テクノロジーセクターの抜本的な見直しに着手し、学校の教科課程を教える企業が利益を出すことや資本を調達、株式を公開することを禁じた。

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  政府の狙いは格差を是正し、教育コストを引き下げて出産数を増やすことだが、短期的には資本・労働市場に痛みをもたらす。ただ、教育テクノロジー企業関連の雇用・消費への影響は一時的なものとなりそうだとエコノミストはみている。こうした支出減少は他分野での持ち直しに打ち消されるためだ。

  コメルツ銀行の新興国市場担当シニアエコノミスト、周浩氏(シンガポール在勤)は「放課後の家庭教師を雇う企業の雇用が減少した後、公立学校でより多くの雇用が創出されよう」と述べ、こうした業界規制は短期的な構造調整を引き起こすものの総需要に影響を与える公算は小さいだろうと説明した。

地方政府

  地方政府の資金借り入れペースが鈍っている。プロジェクトに対する検証が厳しくなっていることなどが理由だ。そのため今年は当初考えられていたよりインフラ投資による景気の後押しが小さくなりそうだ。

  華創証券によると、7月のインフラ投資は前年同月比10%減った。INGグループの大中華圏担当チーフエコノミスト、彭藹嬈(アイリス・パン)氏はインフラ支出の減少は今年のGDP成長率を約0.5ポイント押し下げると話した。

原題:China’s Regulatory Crackdown Is Already Hurting the Economy (1)(抜粋)