- PPLIは契約内の資産が非課税、死亡時も課税されず
- 超富裕層に対する課税「PPLIは深刻な障害」-へメル氏
民主党の増税計画から逃れる方法を求めて躍起になっていた米国の富裕層が、ついにその方法を見つけた。ウォール街の多くはそう考えている。
増税から資産を守る手段として超富裕層の間で人気を集めつつあるのが、私募生命保険(PPLI)と呼ばれるニッチな戦略だ。保有資産が上位0.1%の超富裕層を顧客とするアドバイザーの一部は、いまやPPLIが会話の大半を占めていると語った。
バイデン大統領が億万長者に「公平な分担」を支払わせるとして乗り出した増税への脅威だけが、PPLIへの関心をあおっているわけではない。昨年末に米国で行われた保険法の改正はほとんど気づかれなかったが、PPLIをより強力な手段にした。同時に保険会社や助言会社の競争もあり、富裕層はより柔軟でコストが安く、幅広いPPLI商品を選べるようになった。
資産がPPLIの保険契約の中にある限り、課税対象にはならない。保険契約者が死亡した場合でも、相続者はPPLIの契約内容を非課税で受け継ぐことができる。この特典は、超富裕層の投資に対する課税を増やそうとするバイデン氏の計画を骨抜きにするものだ。現行では、死亡時まで保有されている資産はキャピタルゲインの課税対象にならない。
シカゴ大学の法学教授で、PPLIを制限する方法について民主党と協議を進めているダニエル・ヘメル氏は「バイデン大統領は超富裕層個人に巨額のキャピタルゲインについて一生に一度は確実に納税させることを目指しているが、PPLIはその目標への深刻な障害になる」と指摘。「PPLIは大きな抜け道だ。完全に合法で利用が簡単、ふさぐのが政治的に極めて難しい」と述べた。
PPLIに流入する資産はますます増えているが、米国の超富裕層が保有する数兆ドルのポートフォリオのうち、まだごく一部にとどまっている。業界団体の米国生命保険協会(ACLI)は、PPLIの契約について定期的な調査を行ってもいない。だが、バイデン大統領と民主党が増税法案の成立に成功すれば、少なくとも巨額のキャピタルゲインを抱える超富裕層の間で、PPLIはより主流の戦略となるかもしれない。
原題:Rich Americans Already Have a Plan to Escape Biden’s Tax Hikes(抜粋)