自民党総裁選で、河野太郎規制改革担当相(58)の陣営が「反安倍」色を強めている。主導しているのは、小泉進次郎環境相と石破茂元幹事長。3氏による「小石河連合」は、長期政権を築き、退任後も隠然たる影響力を振るう安倍晋三前首相を「古い自民党」の象徴と見立て、安倍氏との対立軸を前面に「改革派」を印象付ける狙いだ。

 「古い自民党と国民との戦いだ。派閥が横行する党を変えよう」。石破氏は16日、河野氏を支援する派閥横断の「必勝会」でこう強調。小泉氏も「派閥の力学ではなく、説明を尽くし、国民の理解と共感を得て共に歩む政権をつくらなければならない」と足並みをそろえた。

 「古い自民党」が安倍氏を指すのは明白だ。石破氏はこの後、自身が要職を務めた安倍政権の前半と、役職を退いた後半以降では「(党が)変わってきた」と記者団に指摘。森友学園問題などのスキャンダルが相次いだことを念頭に、「国民の納得と共感は得られていない」と断じた。安倍氏が誇る歴代1位の長期政権の価値も「野党が駄目だから自民が選ばれた」と否定した。

 小泉氏は、安倍氏が実質的なオーナーと目される最大派閥の細田派に矛先を向けた。14日の記者会見で、同派が岸田文雄前政調会長(64)と安倍氏が推す高市早苗前総務相(60)の支持を打ち出したことに触れ、「最大派閥は『河野太郎は絶対に駄目』ということ。党風一新の点からも全力で応援したい」と語った。

 小泉氏らの脳裏には、同氏の父、純一郎元首相が選挙戦を「改革勢力」と「抵抗勢力」の対立構図に持ち込み、党員の圧倒的な支持を背に大勝した2001年総裁選の再現もあるようだ。

 総裁選の裏の構図も見えてきた。二階俊博幹事長と気脈を通じる森山裕国対委員長は16日、河野氏支持を表明。菅義偉首相も河野氏を支える意向だ。安倍氏とその盟友、麻生太郎副総理兼財務相は、二階氏の幹事長交代を探っていたとされる。二階氏らは、総裁選を機に安倍氏の力をそぐ思惑のようだ。冷遇されてきた石破派議員は「安倍氏の影響力を断ち切る」とリベンジを誓った。

 ただ、河野氏自身は16日のフジテレビ番組で、安倍氏らと「決別する必要はない」と述べた。国会議員の支持が物を言う決選投票にもつれ込んだ場合に備えて自身は旗色を鮮明にせず、小泉氏らと役割分担をしている可能性がある。所属する麻生派会長の麻生氏への配慮もあるとみられ、河野氏は必勝会には出席せず、ビデオメッセージを寄せるにとどめた。

 安倍氏側は小泉氏に強い不快感を示している。周辺は「党内を分断している。純一郎氏が首相になれたのは森派(現細田派)が結束して支えたからだ」と派閥の力を指摘。竹下派若手も「政策論争を期待したのに権力闘争になった。小泉氏にはがっかりだ」と漏らした。

 ◇野田氏出馬で目算狂う

 ただ、野田聖子幹事長代行(61)が土壇場になって出馬表明し、河野氏らの目算は狂いが生じた。候補者が4人となり、いずれも過半数を得られず決選投票となる可能性が高まったためだ。党員の支持が厚い3人が組んだ小石河連合で、1回目の投票で勝ち切る戦略は修正を迫られそうだ。