岸田文雄首相=首相官邸(矢島康弘撮影)
岸田文雄首相=首相官邸(矢島康弘撮影)

岸田文雄首相が8日に行う初めての所信表明演説の概要が判明した。外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略(NSS)」の改定を表明する。現行のNSSは平成25年に安倍晋三内閣で初めて閣議決定されたが、改定されれば初めてとなる。同時に防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画(中期防)を改定する意向を示す。関係者が6日、明らかにした。

改定NSSでは経済安全保障を重視する考えを盛り込む見通しで、敵基地攻撃能力の保有も焦点となる。現行NSSの策定から7年以上が経過しており、米中対立の激化など日本を取り巻く安全保障環境が激変しているため、改定が必要と判断した。

演説には、日米同盟を基軸に「自由で開かれたインド太平洋」を強力に推進し、中国に責任ある行動を強く求めると盛り込む方向で調整している。

北朝鮮による日本人拉致問題を最重要課題と位置付け、安倍晋三、菅義偉(すが・よしひで)政権の方針を踏まえて首相自ら条件を付けずに金正恩(キム・ジョンウン)総書記と直接向き合う覚悟だと表明する。憲法改正に向けては、改憲手続きを定めた改正国民投票法が6月に成立したことを受け、国会での議論を深めて、国民的議論の喚起を期待する。

首相が看板政策に掲げる「新しい資本主義」に関連し、従業員への給与を引き上げた企業に対する減税措置を抜本的に強化する。さらに看護師や介護士の所得向上に向け、公的価格の抜本的な見直しを行う。学童保育の拡充など子育て世帯への支援も推し進める。

一連の政策を実現するためには国民の政治への信頼が不可欠で、車座集会などを通じ信頼と共感を得られる政治姿勢を打ち出す。