全国で400万票もの票が「案分票」となっていたら、公正な選挙と言えるだろうか――。10月31日に投開票された衆院選の比例代表で、立憲民主党と国民民主党がそろって略称を「民主党」として届け出たため、得票の割合に応じて票を振り分ける「案分票」が大量に生じた可能性がある。静岡県の場合、静岡市葵区で7955票もの案分票が発生。有権者の「1票」にかけた思いが正しく反映されなかったといえる。【石川宏】
両党は公職選挙法に基づき、略称をともに「民主党」として中央選挙管理会に届け出た。中央選挙管理会は政党の略称について異議をとなえることができず、そのまま受理した。結果的に全国で膨大な案分票が出た。
静岡県内は最多の静岡市葵区に続き、▽静岡市清水区が7463票▽静岡市駿河区が6764票▽沼津市が6896票▽三島市が4536票▽富士市(静岡5区)が8355票▽富士市(静岡4区)が630票――などが多かった。有効投票数に占める案分票の割合をみると、最も低かった静岡市葵区でも7・39%。一方、割合が高い富士市(静岡4区)は8・79%、三島市で8・78%だった。
もちろん、県内だけの問題でなく、札幌市は7万2666票の案分票があり、開票終了が想定よりも約4時間遅れた。全国で7%の案分票が出たとすれば、合計は400万票を超え、共産党の総得票数とほぼ並ぶ。
投開票当日、各市の選挙管理員会や投票所に対して、「間違って書いてしまった。分かりやすくしてほしい」(富士市)▽「この略称表記は正しいのか」(沼津市)――などの苦情や問い合わせが相次いだという。三島市選管の担当者は「『この政党に投票したい』という有権者の思いと違うところに票が振り分けられてしまう。解消する方法を検討してほしい」と話した。
総務省選挙部管理課の担当者は「1992年の参院選でも日本新党と国民新党がともに『新党』を略称とした例があり、法律に基づき選挙事務を行っている。実際にどれだけの案分票が出たかは把握していない」と述べた。