【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長が、二酸化炭素(CO2)排出量が問題視されるプライベートジェット(PJ)を多用していることが分かり、「偽善だ」と非難を浴びている。気候変動対策で世界の主導役を自負し、英国での国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でも対応の緊急性を訴えていただけに、矛盾を印象付けた格好だ。

グレタさん「COP26は失敗」 開催地の英グラスゴーでデモ

 COP26では、他にも各国要人の多くが現地入りにPJを利用し、批判が渦巻いている。

 英紙デーリー・テレグラフは2日、フォンデアライエン氏が過去34回の外遊のうち18回でエアタクシーと呼ばれるPJを使ったと報じた。電車や車で1時間ほどで到着する約50キロ先の都市や、ブリュッセルから高速鉄道が走るパリやロンドンへの移動に加え、COP26参加での利用が判明した。

 PJは1人当たりのCO2排出量が旅客便の10倍、電車の50倍とも言われ、近年の需要拡大による温暖化促進が懸念されている。フォンデアライエン氏は1日のCOP26での演説で「温暖化抑制へ何でもするよう全ての人に求める」と力説したばかり。発言の説得力には疑問符が付き、「市民を侮辱している」(シンクタンク幹部)と、「二重基準」への反発も招いた。

 欧州委員会の報道官は4日の会見で、PJ利用は「日程などの制約で他の手段が使えない時だけだ」と釈明。しかし、ドイツ紙ビルトによると、「変化を望むなら模範を示すべきだ」(独連邦議会の中道右派議員)などと、フォンデアライエン氏の母国でも非難が広がる。

 COP26に飛来するPJは200機超とみられている。オンライン参加を選択したメキシコのロペスオブラドール大統領は「偽善はもうたくさんだ」と、会議の在り方自体に疑問を呈した。