[ベルリン 24日 ロイター] – ドイツ社会民主党(SPD)の首相候補、オラフ・ショルツ氏は24日、自由民主党(FDP)および緑の党と新たな連立政権を樹立することで合意したと発表した。

3党は約2カ月間にわたり連立政権樹立を巡って協議してきた。177ページに及ぶ合意書によると、3党は環境に優しい技術やデジタル化への公共投資を加速させる一方で、2023年以降は厳格な債務制限を復活させたい考え。

SPD、FDP、緑の党による連立政権は初となる。これにより、16年間に及んだメルケル首相率いる保守政権に終止符が打たれる。

ショルツ氏はベルリンでの記者会見で「ドイツが最前線を維持するために大規模な投資を行う」と述べた。

各党のシンボルカラーにちなみ「信号連立」と名付けられた新政権は下院の過半数を占めており、各党が連立協約を批准した後、来月初には発足すると見込まれている。

ショルツ氏は、1924年にベルリンのポツダム広場に初めて信号機が設置された時、多くの人がそれが機能するかどうかを疑問視したことに触れ、「現在、物事を明確に規制し、正しい方向性を示し、誰もが安全かつスムーズに前進するために信号機は欠かせない」と指摘。「首相としての私の野望は、この信号連立がドイツにとって同様に画期的な役割を果たすことだ」と述べた。

<満載のアジェンダ>

SPDと保守連合の「大連立」で財務相を務めるベテラン政治家のショルツ氏(63)は、新型コロナウイルス流行との闘いが最優先事項になると述べた。

しかし、同氏率いる連立政権は、再生可然エネルギーの導入拡大、石炭からの脱却加速、最低賃金の引き上げなど、野心的な中長期計画も掲げている。

また、社会的にリベラルな傾向を強調するため、連立政権は多重国籍を認め、定期的に移民を増やし、選挙権年齢を16歳に引き下げ、欧州で初めて娯楽用大麻の販売を合法化することでも合意した。

緑の党のアンナレーナ・ベーアボック共同党首(40)は、ドイツ初の女性外相に就くと見られている。

選挙戦では主に国内問題に焦点が当てられていたが、各党は連立協約の中で、「安定・成長協定」として知られる欧州連合(EU)の財政ルールの改革に前向きな姿勢を示した。

また、ロシアとの緊張が高まる中、西側の軍事同盟に亀裂が入るのを防ぐために、ドイツが北大西洋条約機構(NATO)の核共有協定に残ることにも合意した。

ショルツ氏が台湾やウクライナを巡る対立回避を望んでいると見られる一方、緑の党は人権問題でロシアや中国に厳しい姿勢を求めており、次期連立政権はバランスを取る必要に迫られる見通しだ。

FDPのクリスチャン・リントナー党首(42)が財務相に就任し、緑の党のロベルト・ハベック共同党首(52)は新たに拡大される経済・気候変動省を担当するとの見方が強い。

各党の連立合意の迅速さは、市場関係者の間では良い兆候と受け止められている。

INGドイツのチーフエコノミスト、カルステン・ブルゼスキ氏は「政権発足後もこのようなプロフェッショナルなアプローチが続けば、ドイツが本当に必要としている改革や投資がようやく実現する可能性がある」と述べた。