29日にウィーンで再開されるイラン核合意再建交渉の見通しについて、シンクタンク「国際危機グループ」のイラン専門家アリ・バエズ氏に聞いた。一問一答は次の通り。

 ―交渉が妥結する可能性は。

 イランが柔軟性を示す意思があるかにかかっている。そうでなければ交渉参加国は来年初頭までにジレンマに直面するだろう。交渉プロセスが崩壊し、対イラン制裁発動につながるか、それともイランが核開発の一部を凍結する代わりに米国が制裁の一部を解除する暫定措置を受け入れ、新たな合意を交渉するための時間をつくり出すかだ。

 ―イランの交渉への態度は。

 (中断前の交渉では)妥結に近づいたが、いくつか残された点がイランにとって根本的な問題だと明らかになった。最も重要なことは、イランは(米国が約束する)制裁解除が効果的かつ持続可能な形で行われると信じていないということだ。それゆえバイデン米大統領が制裁解除を取り消さないことや、次の大統領が合意をほごにしない保証を求めている。

 ―米、イランの暫定合意に対する見方は。

 バイデン政権は、緊張緩和にとって非常に有益と見ている。来年の中間選挙を前に、限定的な制裁緩和と引き換えにイランの核開発に向けた動きを減速させれば、多くの批判にさらされないで済む。イランにとっては、経済的救済につながる一方で、交渉の手札を強める手段を失うことになる。関心を持っているかどうか判断するのは難しい。

 ―イランと敵対するイスラエルの対応は。

 (ネタニヤフ前政権と異なり)イスラエルの新政権は、核合意に関して公の場で米国と争うことはしない。だが核合意再建を望まない点ではそれほど変わらない。交渉が失敗に終わり、イランが核兵器開発を加速する能力を得れば、イスラエルが軍事行動を起こす危険性は現実かつ重大になる。