年が明けてはや2週間。昨年はコロナに明けてコロナに暮れた1年だったが、今年は年明け早々からオミクロン株一色の展開になってきた。昨年の12月はじめに国内ではじめてオミクロン株が確認された時、岸田首相は「責任を一手に引き受ける」と強調して水際対策の強化に打って出た。前政権が後手後手と批判されていただけに、その轍を踏まないための先手必勝の一手だった。帰国者には不評だったが、メディアの理解と支援を得て支持率はアップ、新政権のコロナ対策に期待が高まった。その期待感にオミクロン株が冷や水を浴びせた。「最悪の事態」を想定した対策に大きな欠陥があった。在日米軍には強力な水際作戦が適用されなかった。沖縄も山口も広島も米軍基地から感染が広まった可能性がある。濃厚接触者に課した14日間の隔離義務も混乱に拍車をかけた。看護師などエッセンシャルワーカーが職場に出勤できず、医療の逼迫を招いた。
未知との遭遇である。不手際は付き物だ。感染防止に向けて政府や自治体、医療関係者などがドタバタするのは致し方ない。多少の不手際も寛容に受け止めるべきだろう。メディアが報道する以上に日本は国際的に見ればうまくやっている。そう思いつつ気になることがある。メディアを通して連日報道されている大量の「オミクロン情報」が、推測をベースにした過大なリスクの積み上げに終始していることだ。例えばきょうのNHKのニュースサイト。「オミクロン株 感染拡大 これまでにない速さ 一定程度重症化も」と題した記事は、感染者が増えれば重症者も増えると警鐘を鳴らず。一般的にオミクロン株は感染力が高いが、重症化しないと言われている。これを否定するかのようにこの記事は、「感染者が増えれば重症者数が増加するおそれがある」と不安を煽る。多くの専門家もこの記事に同調する。
オミクロン株が最初に発見された南アはすでに感染がピークアウトしている。英国は17日から隔離期間を7日から5日に短縮する。フランスはオミクロン株に関する規制を14日から一部緩和した。感染拡大が先行したヨーロッパでは一部にオミクロン株のピークアウトによって、コロナはパンデミックからエンデミックに収束するとの期待感も出始めている。こうした情報を日本の主流メディアはほとんど扱わない。専門家もどういうわけかコメントを回避している。遅れてきた感染拡大とともに日本では主流ディアを中心に、オミクロン株に対する警鐘だけが強調されている。感染症の常として警鐘や警告が防止対策として大きな役割を果たしていることはよく理解できる。だが世界の流れに棹さすだけが感染防止対策ではないだろう。「もっと冷静で客観的な報道を」、ついそんなことも言いたくなる。
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