【ロンドン時事】エリザベス英女王(95)の次男アンドルー王子(61)が、軍名誉職などの役職を女王に返上した。王子の性的虐待疑惑をめぐる裁判が開始されることを受けた措置で、王室による事実上の公的資格剥奪だ。王子は疑惑を否定するものの、裁判自体が王室のイメージを損ねると懸念されている。王室は王子との距離をできるだけ遠ざけることで影響回避を図った。

アンドルー王子の軍籍剥奪 性的虐待疑惑、公的地位全て失う―英王室

 アンドルー王子を提訴したのは、未成年だったころ王子から性的被害を受けたと訴える米国人女性。王子側は却下を求めたが、ニューヨークの裁判所は12日、これを退け、手続きを継続すると決定した。本格的な審理が始まる見通しだ。

 王室は翌13日の声明で役職返上を発表し、王子が裁判に「私人として臨む」ことを強調した。王子は疑惑を受けて2019年から公務を停止しているが、今回の措置で全ての公的立場を失う。

 王子はメディアを通じ「女性とは面識がない」と主張。疑惑を全面否定してきた。

 しかし、提訴に伴い、少女性虐待事件で起訴された米富豪ジェフリー・エプスタイン被告(勾留中に死亡)や、同被告と共謀したとして有罪評決を受けたギレーヌ・マクスウェル被告と王子との交友関係の詳細が次々と明るみに出ている。

 既に「王子の評判は修復不能なほど汚された」(デーリー・ミラー紙)状態。さらに、主要王族が裁判にかけられる前代未聞の出来事は、審理の行方にかかわらず王室へのマイナス要因だ。王室と女王を守るには、もはや王子との公的なつながりを絶つしかないと厳しい判断が下された。

 英国では今年、2月の女王の在位70年を記念し、国を挙げてさまざまな祝賀イベントが開かれる予定だ。歴史的なプラチナ・ジュビリー(在位70周年)となるが、王子の疑惑は祝賀ムードに「暗い影」(同紙)を投げ掛けている。